【0277】審査請求人の適格性

1.形式審査における請求人適格の審査

国税不服審判所に提出された審査請求書が実質審理に入るためには、その審査請求の適格性を事前に審査する必要があり、これを形式審査といいます。
形式審査には、様々な論点がありますが、今回は審査請求をすることができる者か否かという審査請求人適格についてご説明します。

2.請求人適格の有無の検討

請求人が国税通則法第75条第1項に規定する「処分・・・に不服がある者」(請求人適格)に該当するかどうかについては、それぞれ次に定めるところによって判断します。
処分の名宛人
請求人適格があるとされます。
処分の名宛人でない第三者
一般に請求人適格はないとされます。
ただし、例えば、次に掲げる場合のような第三者は、処分により自己の権利、法律上の利益が侵害されることから、請求人適格があるとされます。
・差押えに係る財産について抵当権を有する者
・差押えに係る財産について所有権を主張する者
・国税徴収法第2条第9号に規定する滞納者と他の者との共有に係る不動産につき当該滞納者の持分が同法第47条第1項の規定により差し押さえられた場合における当該他の者
相続人
被相続人に対する所得税等の課税処分及び承継した租税債務に係る徴収処分について請求人適格がある。
特別縁故者
相続税法第4条の規定に基づき遺贈により財産を取得したものとみなされる場合には、相続税の課税処分について請求人適格がある。
被相続人に対する所得税等の課税処分及び租税債務に係る徴収処分については、直接の利害関係を有せず、また、国税通則法第5条の規定による納税義務を承継しないことから、請求人適格はないとされます。
遺言執行者
・遺言において指定された財産に係る差押処分については、遺言執行者は遺言において指定された財産の管理その他遺言の執行に必要なー切の行為をする権利義務を有することから、自己の名において請求人適格があるとされます。
・督促処分については、同処分が単に相続人に国税の納付を催告するものにすぎず、遺言執行者の管理処分権を侵すものではないことから、請求人適格がないとされます。
不在者(例えば国外出張者)の財産管理人
請求人適格がないとされますが、国税通則法第107条の定めによります。
国税通則法第3条に規定する人格のない社団等
請求人適格があるとされます。
清算中の法人
清算の目的の範囲内でなお権利能力を有することから、請求人適格があるとされます。
なお、会社につき清算結了の登記が経由された場合であっても、当該会社は、清算が結了するまで(残余財産がなお存在するとき)の間は、請求人適格があるものとして取り扱われます。
破産手続開始の決定等があった後に審査請求をする場合
・破産法に基づく破産手続開始の決定があった場合
破産者は請求人適格がなく、破産管財人に請求人適格があるとされますが、破産手続開始の決定があった場合であっても、破産財団に関しないものに係る審査請求(例えば、当該決定後に生じた破産者の所得に係る課税処分を対象とする審査請求)については、破産者に請求人適格があります。
・会社更生法に基づく更生手続開始の決定があった場合の更生会社は請求人適格がなく、管財人に請求人適格があるとされるところ、会社更生法の規定により更生会社の機関が財産の管理処分権を回復している期間中に審査請求する場合には、当該更生会社に請求人適格があります。
・民事再生法に基づく再生手続開始の決定があった場合
再生債務者に請求人適格があるとされるところ、再生債務者が法人である場合において民事再生法第64条第1項の規定により管財人による管理を命ずる処分がされたときは、再生債務者は請求人適格がなく、当該管財人に請求人適格があります。
国税徴収法の無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務の規定により第二次納税義務者として納付告知処分を受けた者
当該告知処分について請求人適格があるほか、滞納者本人に対する課税処分にっいても請求人適格があるとされます。
債権差押えに係る第三債務者
当該債権差押処分を争うことにつき請求人適格があるとされます。
源泉徴収に係る所得税の納税告知処分
源泉徴収義務者である支払者に請求人適格があり、受給者には請求人適格はないとされます。

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