【0110】民間出身国税審判官の或る日の日記(その11)

1.平成26年12月〇日

同期の弁護士出身審判官に年賀状を出そうと住所を聞いたら「ABCクラブの名簿に載っているよ」と言われた・・・そうそう、聞かなくて良いと思っていたのに忘れていた。

「ABCクラブ」とは、民間出身の国税審判官の現役とOBで構成する任意組織のことで、「Alien Board Cast」の頭文字を取ったものと聞いています。
「Alien(エイリアン)」は「よそ者の・異質の」と捉えて、国税プロパー出身者ではない外様の立場から国税不服審判所を見るという意味を込めた名づけだったようです。

自分が担当するA事件の議決書案について、先週金曜日の支所長説明時の指摘を反映したバージョンを支所長、総括審判官に差し入れたが、総括審判官から追加の指摘がなければ良いが・・・次回の未済事件説明会の資料を本日正午までにドキュワークスで本所の管理係に送信しないといけないので焦る。

裁決書の原案となる議決書は、審判部に所属する担当審判官・参加審判官による合議体(特に担当審判官)が起案し、それを法規審査部門(大阪国税不服審判所では審理部)に回付し、最終的には審判所長の決裁をもって裁決となりますが、たとえ担当審判官が起案したものであっても、とにかく寄って集ってコメントされ手直しされます

とりわけ1年目かつ弁護士出身でもない私にとって、国税に関する民事判決に類似する議決書などを起案した経験もなく、とにかく見様見真似で頭をゴチゴチぶつけながら起案しては、方々から様々なコメントを受けて書き直すという毎日でした。

未済事件説明会とは、大阪審判所で審判部に係属している(議決未済の)事件の概要・審理の進捗状況・現時点の処理方針について、審判所長・次席審判官・審理部に説明する会議のことで年に数回開催されており、そのための資料を1週間前に管理課管理係に提出しないといけなかったのでした。

2.審判所長の異動の影響

来年4月の審判所長・裁判官出身審判官異動に関係して、結局「本年5月までに収受した審査請求事件については来年3月までに決裁できるようにするが、それ以降の収受分については例外なく新所長回しになる」との方針が決まったようで、現在こちらに係属している事件は全て新所長回しとなった。
ということで、「来週の(現所長下で行われる)未済事件説明会をする意味があるの?」ということになるのだが、そうなったからには仕方がない。

大阪審判所の所長と裁判官出身審判官は法務省から出向しており、翌年4月の異動による交代は確定的でした。
当然ながら大阪審判所に係属する事件の全てはこの両名を経由しなければ裁決に至らない(最終的に決裁ラインはこの1本に収斂される)ため、裁決方針が初期段階から固まっていても、決裁待ちの渋滞を起こすことがありました。
そうすると、「どの事案までは現所長で処理して、どの事案からは新所長で処理するのか」といった線引きをすることになります。
詳細については「【0101】裁決書決裁の『バスに乗り遅れる』(https://www.trusty-board.jp/blog/2427/)」を参照してください。
所長が交代すれば審査請求事件の処理方針が異なる可能性もあり、合議体としてはできるだけ現所長の下で決裁して欲しいと思うのですが、結果的にそれが叶いませんでした。

ただ、議決についてはモデル議決日を遵守して処理し、審理部に回付することになった。
審理部からは「早期に議決書を貰っても・・・」という意見があったらしいが、だからといって、モデル議決日からの超過は統計に残ってしまうので、モデル議決日に収まるものまでタラタラする必要はない。
それに、審判部が怠けていると思われるのも癪なので。

モデル議決日とは、国税不服審判所の業績目標である「1年以内処理割合95%以上」のために、審査請求事件の難易度やボリュームに応じて、「この事件は審査請求日から〇日以内に合議体で議決する」といった審判部内の処理目標の期日のことです。
審判所長の人事異動の都合から所長の決裁予定が相当先になるにもかかわらず、モデル議決日とおりに審判部から議決書(裁決書案)が回付されてくると、法規審査部門(審理部)が抱える時間が長くなることから、審理部としてはモデル議決日を度外視して所長決裁予定が近くなってから議決してほしいと思うのです。
しかし、審理部の言うとおりにすると、審判部の持ち時間が長くなり、審判部が統計上怠けているような印象を持たれてしまうことになります。
こういったそれぞれの組織事情を優先することによるせめぎ合いは、いかにも公務員組織らしいものでした。

3.忘年会とルミナリエ見物

夕方から支所忘年会をした。
それにしても先輩の弁護士出身審判官は話を合わせる(応答の仕方)のがうまくて、人当たりも至ってソフトで、審査請求人に対する面談時にも活きているのかもしれない。
終わってからルミナリエを40~50歳代のおっさん8人で見に行った。
ともに59歳の支所長と総括審判官が2人で交互に写真の取り合いをしていたのが面白かった。

当時在籍していた弁護士出身審判官を見ていると、審査請求人をはじめとした業務上関わる者の接遇の巧さを羨ましく思い、翻って自分の未熟さを思い知っていました。
国税不服審判所はその職務上ベテラン職員の配置が多い組織であり、民間出身審判官の任用によって平均年齢を多少下げる効果があったにせよ、審判部の平均年齢は50歳を超えていました。
支所長が管外からの出向者であることもあって、当時私が所属していた神戸支所の総員10名のうち忘年会に参加した8名が、神戸の冬の風物詩であった神戸ルミナリエに繰り出したのですが、「自分よりも年上のおっさんとじゃなくて家族で来たかったな」と思いながら見物していたものでした。

 

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