【0102】民間出身国税審判官の或る日の日記(その7)

1.平成26年9月24日

幹部会の各事件進捗について、2部門のA事件については審理部から差戻し方針を言い渡されたようだが、その場合は審理部が所長に説明して承認を取ってされる話なので、合議体としては割り切って取消し方針で議決書を書くようである。

(補足)
週のはじめには、朝9時に指定官職(審判官・副審判官)が支所長室に入り、その週の予定と事案の進捗状況の確認をするための「幹部会」を行っていました。
A事件については、2部門の合議体は処分取消し方針(納税者勝ち)、法規審査は棄却方針(納税者負け)で対立していましたが、合議体が取消し方針で議決書を上げた場合、法規審査が覆すには、審判所長による「返戻(差戻し)」の決裁を必要とするため、「棄却したいのであれば所長を説得してください」と審理部に下駄を預けることにしたようです。
結局、その事件は、審理部が折れて取消し方針で裁決されたと聞きました。

今事務年度の人事評価記録書はEXCEL入力ではなく独自のシステム入力でということになった。
期限は10月3日ということだが、また業務目標を考えるのに悩まないといけない。

(補足)
詳細については「【0020】国税審判官の人事評価(https://www.trusty-board.jp/blog/1488/)」を参照してください。

2.裁決にはコメントできない

B事件については裁決書を送達してから請求人から電話がないようであるが、あっても質問回答や解説などを施してはいけないらしく、「これをどのように解釈して貰っても良いし、納得できなければ裁判に。」という回答をするようだ。

(補足)
特に代理人のいない本人審査請求の場合、裁決書を送達すると審査請求人から電話がかかってくることがあります。
たいがいは審査請求棄却(納税者負け)の場合のクレームですが、審判所長が裁決した書面について、たとえ担当審判官といえども解説を加えることは許されません。
詳細については「【0006】裁決書の書面の中でしか回答できない(https://www.trusty-board.jp/blog/1312/)」を参照してください。

3.初めての原処分庁調査

自分が担当審判官をするC事件について初めての原処分庁調査に税務署に行くが、税務署に調査に行くという経験が新鮮である。
こちらで昼食を食べてから行く予定であったが、副審判官が「もうちょっと早く行って向こう周辺のいつもと違うところで食べてから税務署に行ったらどうか?総括審判官と大橋審判官にいつもと違うお昼を摂ってもらうという配慮をしても良いのでは?」と審査官に言っていたが、この辺りが副審判官独特の遠回しな言い方である。
結局早めに出て駅周辺で昼食を摂ったが、その地域の名物料理ではなく喫茶店に毛が生えたところで落ち着く(総括審判官のおごり)。

(補足)
税理士にとって何より新鮮なのが、担当審判官として税務署の調査資料を検査する権限を行使することです。
国税不服審判所は想像していたよりも動かない職場であり、出張を何より楽しみにしている職員が多かったです(監査に従事する公認会計士のように事務所から出ずっぱりの者にとってはかなり意外でした)。

税務署に臨場したが、個人1統官も異議担当上席のみならず、挨拶した署長も副署長も「あんたが審判官?」みたいな戸惑いの雰囲気を醸し出している。

(補足)
処分をした税務署に臨場すると、たいがいは署長室に入りご挨拶をしますが、これは「あなたの所轄の納税者から審査請求が出ているので、あなたの部下職員にご協力いただくととともに、管理されている証拠資料を拝見させていただく。」という仁義を切りに行くセレモニーのようなものでしょうか。
国税プロパー出身の国税審判官は55歳前後のベテラン職員であるのに対し、私は当時41歳かつ年齢よりも若く見られたようであり、初回だからか余計に「外様に対する警戒感」を感じ取りましたし、実際の検査の窓口となる1部門統括官は、結局最後まで私と目を合わせてくれなかった記憶があります。

税務署による証拠資料一式を確認するが、どれが大事であるかがいまいちわからず、総括審判官や審査官にも同じ書類を一通り見てもらってコピーを徴求する部分を付箋で指示して帰ってきた。
自分達でコピーを取るのかと思ったらその辺りは信頼関係のようだ。
最初ということもあり総括審判官には最後まで居てもらったが、自分と審査官だけだと正直不安だった。

(補足)
民間から任官されると、まずもって調査資料の体系が把握できておらず、どこにどんな資料が編綴されているかどうかもわからない状態で、国税プロパー出身の審判官や審査官に依拠することが多くありました。
また、監査調書のように各資料にインデックスが付されていないことも多く、この数字がどの資料から飛んできたものかという相互参照がわからない状態でした。
更に、争点に直接関係のない資料を悉皆的に収集すると、後に国税局の審理課からの「その資料を収集する必要があるのか」という指摘を受けることもあります。
同様に、原処分庁の処分の意思決定に直接関係する資料についても、原処分庁の判断に拘束されない審判所としては収集する必要がないともいえますので、どのような資料をどこまで収集するかについては、常に自問自答していた記憶があります。

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