【0094】民間出身国税審判官の或る日の日記(その3)

1.平成26年8月〇日

他の研修参加者よりも1日遅れて支所長に復命。

(補足)
例年7月下旬から8月上旬にかけて、埼玉県和光市の税務大学校で初任者のために審判実務研修が開催(土日を除いて6日間)されますが、私は研修最終日の翌日に年次(有給)休暇を入れていたため、他の参加者よりも1日遅れて支所長に出張報告をすることになりましたが、「復命」という言葉は公務員になって初めて知った言葉の1つでした。

来週からそれぞれ夏季休暇に入るということで、月曜定例の支所幹部会が本日あったが、休暇中の事故(不祥事)などには気をつけてと、支所主催の秋の厚生行事の幹事の(京都支所との)押し付け合いみたいな話があった。
さすがに本格登山だと参加者は少ないだろうし、去年の酒蔵巡りと神戸スイーツ巡り的なものが良いのだろう。
厚生行事が活発なのは、最初にお世話になった事務所の先生が国税OBで厚生行事に積極的だったこともあって慣れているが、監査法人トーマツ時代がドライだっただけに、若干の煩わしさを感じなくもない。
来週からそれぞれ夏季休暇に入るということで(という理由がよくわからないが)、副審判官主催で飲みに行こうということになっていたが、16時台になって支所長のお母様が交通事故に遭われたとの連絡があり、急遽故郷に向かわれたので中止になったが、副審判官は審査官2名を連れ立って行ったようだ。

(補足)
毎週月曜日に指定官職(部長審判官から副審判官まで)が部長室に入り、進行中の審査請求事件の進捗状況や行事等の確認をするための幹部会を行っていました。
「幹部」とはいうものの、税務署であれば総務課長より上という総員のほんの一握りながら、ベテラン職員の多い審判所では、支所10名のうち7名(支所長・審判官4名・副審判官2名)が幹部であり、頭でっかちな組織でした。
現在の幹部が若手の頃は「厚生行事は全員参加・新人若手は幹事強制」という時代であり、最近でこそその慣例が廃れつつあるようですが、監査法人のドライな人間関係からすると窮屈な印象を持っていたものでした。 

2.プライベートな内容が聞かれる上司面談

その後事務年度初めの支所長面談を受ける。
業務内容というよりもモロにプライベートの質問(アルコールの摂取量・賭け事・ローン残高・小遣いなど)が多かった。
前職では上司も部下も、お互いのプライバシーに立ち入ることにあまり興味がなかったので、なぜこんなこと聞くんだ?というようなことも聞かれる。

(補足)
公務員と民間(特に監査法人)との違いを特に感じたのは、プライベートのことまで根掘り葉掘り聞かれるということです。
金融機関のような業種であれば今でも当然かもしれませんが、不祥事の芽を事前に把握し摘出するために、上記の事柄を聞かれました。

3.税理士・公認会計士が訴訟指揮を執る難しさ

担当する事件につき請求人代理人弁護士から反論書の追加が来ていた。
同じく、前任の担当審判官による本部照会の回答内容を把握する。
内容は予想通りというものだったが、本部所長が自身でわざわざA4で10枚にわたるコメントを返してくれたのには驚いた。

(補足)
私が最初に関与した事案は、前任の弁護士出身審判官からの引継事案で、異動(任期満了退官)前に本部照会を出しておられました。
国税出身者は「本部照会をするまでもなく審査請求棄却ではないか」と主張していたようですが、裁判官である審判所長の「支部意見としては『処分取消しもあり得る』として本部の見解を聞いてみるべし」との意向によってなされたと聞きました。
研修中に、本部の法規審査担当審判官(検察官)が「本部所長自ら処理方針について起案しておられるのでよく確認するように」と言われましたが、実際に見るとA4で10枚にわたり自ら処理方針とそうすべき理由、そして裁決書の説示例まで記載されていました。
審判所長は報告を受けただけでハンコを押すだけだと思っていたのですが、本部所長も裁判官であり、文章を起案することを厭わないんだなぁと妙に感心した記憶があります。

大論点はそれで良いとして、細かい主張については先方代理人弁護士に接触しないといけない。
まずは研修中に来た追加の反論書の解読をしなければと思っているのだが、意味が良くわからない・・・というか、理解できていないことが代理人弁護士に知れるのが怖いというか。

(補足)
税務争訟の当事者に立ったこともない、大学院等で専門的な知識を学んだこともない私が、代理人弁護士や原処分庁(背後には審理課等の不服申立担当者が控えている)の間に立って訴訟指揮をいきなり執る立場になり、正直に申し上げて上記のような恐怖に慄いていました。
また、この事案によって、国税通則法の重要性を再認識させられました。

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