【0113】国税不服審判所設置の法律案審議の経過

1.法律案の提出と審議経過

税制調査会の「税制簡素化についての第三次答申」を受けての最初の法案は、昭和44年2月18日、第61 回国会に「国税通則法の一部を改正する法律案」として提出され、同年6月27日の衆議院大蔵委員会、同年7月1日の衆議院本会議においてそれぞれ一部修正の上可決し、参議院に送付され、参議院大蔵委員会においてほぼ成立を目前にしていましたが、いわゆる「70年安保闘争」とあいまった大学立法の混乱の余波を受けて、第61回国会での政府案は審議未了(廃案)となりました。

次いで、政府案は、昭和44年12月1日、第62回国会に上記衆議院における修正を全て織り込んだ上で提出されましたが、この時は、総選挙を目前に控えた短い会期であったため、大蔵委員会の審査に入るに至らず、 再び審議未了(廃案)となりました。

2.法案の成立

昭和45年2月17日、第63回国会に提出された政府案は、衆議院大蔵委員会においては 3月4日附帯決議を付して可決、翌5日の本会議において原案のまま可決、参議院大蔵委員会においては 3月24日附帯決議を付して可決、同月27日の本会議において原案のまま可決され、「国税通則法の一部を改正する法律(昭45法8号)」として同月28日公布、同年5月1日施行の運びとなりました。

この法律による改正は、次のとおり、国税不服審判所の設立をはじめとして不服申立手続の全面的な改正に及ぶ大幅なものでした。

3.機構に関する規定

国税不服審判所の機構に関しては、以下の規定が置かれました。

❶国税に関する審査請求の審理、裁決を行う納税者の権利救済機関として、従来の協議団より更に第三者的性格の強い国税不服審判所が設けられるとともに、審査請求の能率的な処理を図るため、各国税局の所在地に国税不服審判所の支部が設置された。
❷国税不服審判所と同支部には、事件の調査及び審理に当たる国税審判官、国税副審判官、国税審査官が置かれた。

4.審査請求手続に関する規定

国税不服審判所における審査請求手続に関しては、以下の規定が置かれました。

❶始審的審査請求(異議申立てを経ない審査請求)の請求期間が1か月から2か月に延長された。
❷審査請求書について口頭や職権による簡易な補正手続が認められた。
原処分庁に答弁書の提出を義務付けるなど双方の主張を明確化する措置が講じられた。
❹審査請求についての裁決は、国税審判官などで構成する合議体が行う議決に基づいて国税不服審判所長が行うこととされた。
❺裁決の個別的並びに具体的妥当性を確保するため、国税不服審判所長は、国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈と異なる解釈により裁決をすることができることとし、この場合又は法令解釈の重要な先例となると認められる裁決をする場合には、国税不服審判所長は、あらかじめその意見を国税庁長官に申し出るものとされ、国税庁長官はその申出につき指示をする場合には、一定の場合を除き、国税審査会の議決に基づいてこれをしなければならないとされた。
❻大蔵大臣が任命する学識経験者10人以内の委員からなる諮問機関として国税審査会が国税庁に設けられた。

5.異議申立てに関する規定

異議申立手続に関しては、以下の規定が置かれました。

❶異議申立期間が1か月から2か月に延長された。
❷異議申立書について口頭や職権による簡易な補正手続が認められた。
異議申立後3か月を経過しても決定のない場合には、異議申立人の申立てにより異議決定を経ないで審査請求ができることとされた。
❹合意による又は他の審査請求に伴うみなす審査請求の場合には、みなす審査請求の通知に係る書面に原処分の理由を付記することに改められた。

6.国税不服審判所の発足

昭和45年3月28日、国税通則法の一部を改正する法律が公布されたことに伴い、国税不服審判所の昭和 45年5月1日設置が確定したため、その発足を円滑に行うための「国税不服審判所設立準備委員会」が設けられ、同年4月1日、大島隆夫委員長ほか28名の委員が発令されて、その準備事務に当たりました。

そして、国税不服審判所は、昭和45年5月1日、東京都千代田区霞が関3丁目1番1号国税庁内に開庁し、初代所長に八田卯一郎氏(前東京簡易裁判所判事、元静岡地方裁判所長)が発令されましたが、当日は、大蔵省講堂において、福田赳夫大蔵大臣をはじめ大蔵省、国税庁の幹部及び衆参両院の大蔵委員長をはじめとする来賓多数を迎え開所式典が挙行され、他の行政分野に類例を見ない執行機関から独立した不服申立て処理機関としての国税不服審判所が発足しました。

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