【0237】再調査の請求3月後の教示

1.教示の規定

国税通則法111条1項は、再調査審理庁は、再調査の請求がされた日の翌日から起算して3月を経過しても当該再調査の請求が係属しているときは、遅滞なく、当該処分について直ちに国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければならない旨を規定しています。

2.教示の趣旨

救済手段の教示は、法令、制度について処分を受けた者等が不知のため折角の救済制度を利用する機会を失することのないように定められたものです。
特に国税通則法においては、再調査の請求をしている者は、再調査の請求をした日の翌日から起算して3か月を経過しても再調査の請求についての決定がないときは、その再調査の請求に係る決定を経ないで国税不服審判所長に審査請求をすることが認められています。
そこで、この項では、上記の決定を経ないで審査請求ができる処分について、再調査の請求後3か月経過した段階で、再調査の請求人に対して、書面で審査請求ができる旨を教示すべきものとしています。

3.みなす取下げ

しかし、3か月を経過したからといって、再調査決定を待たずに審査請求をすることは慎重を期した方が良いかもしれません。
それは、再調査の請求後3か月を経過し、再調査決定を経ないで審査請求がされた場合には、再調査の請求は取り下げられたものとみなされるからです。
これは、仮に再調査の請求をそのまま係属させれば、審査請求と重複して審理が進められることとなり、争訟経済に反するばかりでなく、もし、相互に矛盾した裁決等が出されれば、混乱することとなるからです。
ただし、国税通則法110条2項の規定により、郵便又は信書便による送付期間等の関係で再調査の請求の全部又は一部を認容する再調査決定書の謄本が発せられた後に審査請求がされたときは、全部取消しの場合にあってはその審査請求が、一部取消しの場合にあってはその取り消された部分の審査請求が取り下げられたものとみなされます。
これは、再調査の請求人は、その申立てが認められた(原処分が現実に取り消された)ことを知らないで、審査請求をしたことになるところ、このような審査請求は実益がなく無駄であるから取り下げられたものとみなすこととしたものです。
しかし、再調査の請求人の主張が全く認められなかつた場合においては、再調査の請求が取り下げられたものとみなすことにより、その後の審理を国税不服審判所においてすることとなります。
したがつて、その後に再調査の請求について決定を行っても、それは無効であり、審査請求がそのような再調査決定によって遡って効力を失うものとは解されていません。

4.3か月経過後の審査請求は慎重に

不服申立ての代理人を経験して思うところですが、再調査の請求後3か月を経過したことの教示は、再調査の請求人(又は代理人)に対して厳格には行われていない印象です。
おそらく、3か月にはぎりぎり間に合わなかったけれども、再調査審理庁の内部では決定の方針が決まっており、字句修正、決裁待ち、再調査決定書謄本の発送準備といった作業によって3か月を若干経過したといったケースでは、わざわざ教示文を発出することはないのだろうと思います。
丁寧な担当者であれば、3か月を経過する時点で再調査の請求人(又は代理人)に対して、「間もなく決定書謄本を送達しますのでしばらくお待ちください」といった連絡をして来ることがあります。
いずれにせよ、再調査の請求人が3か月を経過したからと審査請求をしてしまうと、仮に再調査審理庁が原処分の取消しの方向で審理していた場合、その方針が幻となる(改めて国税不服審判所で審理される)ことから、再調査の請求をしたのであれば、3か月を経過したとしても決定まで待つといった姿勢を採る方が良いのではないかと思います。

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