【0235】裁決書の様式(その2)

1.「争点」欄

複数の争点がある事件については、手続に係る争点から実体に係る争点の順に記載するなど、論理的順序に従って整理して記載するのが望ましいとされています。
例えば、「税務調査手続」や「理由付記の不備」についても主張されている場合には、まずそれらについての争点を記載して、判断もそれらを優先して行うことになると考えられます。

2.「争点についての主張」欄

当事者の主張をそのまま引き写しする(コピー&ペーストする)のではなく、簡潔明瞭に取りまとめた上で記載するのが望ましいとされています。
審理手続の終結に先立って「争点の確認表」を送付することになりますが、その段階で当事者から、主張を要約することなくそのまま記載するよう求められた場合は、双方の主張の対立点を明確にし、争点を確立するため、主張の要旨が記載される箇所である旨を説明して理解を求めることとされています。
また、同欄には、主張の根拠となる証拠や供述の内容に係る記載は行わず、「争点についての主張」欄は、別紙によらず、本文中に記載するのが望ましいとされています。
同欄の様式は、通常は両当事者の主張を左右で対比させている表形式を採用していることが多いと思いますが、これは、内容の複雑さ、読みやすさなどの観点から、仮に争点が一つであっても、主張のポイントが複数あり、各ポイントについて主張を対比させたほうが分かりやすい場合に表形式で表示と整理しやすいからだと思われます。
なお、表形式の場合は、立証責任を負う側を左に位置させることになっており、例えば、更正処分については一般的には原処分庁が左に、更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分については一般的に請求人が左に位置するようになっています。

3.「当審判所の判断」欄

記裁順序の基本形は次の二つとされていますが、選択に迷う場合は、法令解釈先行型を採用して差し支えないとされています。
・法令解釈先行型:①法令解釈→②認定事実→③当てはめ
・認定事実先行型:①認定事実→②法令解釈→③当てはめ
認定した事実を単に法令に当てはめることにより結論を導き出せる事件(いわゆる法令解釈をするまでもない事件)にあっては、法令解釈をわざわざ記載する必要はなく、この場合には、「認定事実」欄及び「当てはめ」欄を分けずに、「検討」欄又は「争点○について」欄を設けて記載する方法でも差し支えないとされています。
また法的三段論法に基づく判断過程の記載量が少なく、「法令解釈」欄、「認定事実」欄、「当てはめ」欄に分けずにまとめて記載した方が分かりやすい場合は、「検討」欄又は「争点○について」欄を設けた上で、その中で法的三段論法に基づく判断過程を一括して記載することとして差し支えないとされています。
なお、「法令解釈」欄や「当てはめ」欄において、「関係法令(等)」欄に記載した関係法令や「争点についての主張」欄に記載した当事者の主張を再掲する場合には、裁決書が冗長となることから従前に記載した内容をそのまま記載することは差し控えることとされており、例えば、関係法令については「上記○のとおり規定しているところ」と記載し、当事者の主張については「上記○のとおり、○○○(要約したもの)と主張する・・・」と記載することになります。

4.「認定事実」欄

当事者間において争いのある事実について審判所が証拠に基づいて認定した事実を記載するものですので、その冒頭において、証拠の出所(審理関係人が提出した資料や審判所が職権で収集した資料など)をまとめて記載するのが望ましく、その上で、重要な認定事実について当事者の主張が対立しているような場合には個別に具体的な証拠を摘示し、場合によっては、「認定事実」欄以外に別欄を設けて証拠の中身を記載することもあります。
なお、原則として、認定判断に用いた証拠の中身、例えば、答述の内容や書証の内容などは書かず、認定判断に用いた(用いなかった)といった証拠の信用性に言及する必要はないとされています。
これは、認定判断に用いた証拠、例えば、答述や書証は、それが信用できると判断したからこそ、それらの証拠に基づいて事実を認定するものであり、認定事実には、審判所が証拠を自由に評価した結果、認定できると判断した事実のみを記載すれば足るとされています。
しかし、この趣旨は、事実関係に関する証拠評価に争いが生じていないもの、例えば、成立に争いのない契約書に記載された内容についての証拠の中身(契約書の記載内容)についてまでは記載する必要がないというものであって、決して、事実関係に関する主張が対立し、その点の証拠評価が勝敗を決する場合においてまで、証拠の中身を記載しないことを意図するものではありません。
なお、仮に証拠の中身を記載する場合には、「認定事実」欄に答述等の内容をそのまま記載するのではなく、「認定事実」欄とは別欄を設けた上で記載し、その後その証拠の信用性についての検討を含めて「当てはめ」欄において記載する方法や「証拠の信用性について」欄を設けてその中で、証拠の中身を記載した上で、その信用性の検討内容を記載する方法、あるいは、「○○の主張について」欄において、申述や答述の内容を記載した上で、その信用性を否定する記載をする方法などが考えられるでしょう。

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