【0233】口頭意見陳述の留意点(その15・終わり)

1.正当な理由により口頭意見陳述の期日に出席しなかった場合

申立人が口頭意見陳述の期日に出席しなかった場合、担当審判官は、国税通則法第97条の4第2項第2号の規定により審理手続を終結することができますが、所定の正当な理由があるときは、再度の口頭意見陳述の申立手続によることなく、口頭意見陳述の期日及び場所を変更して実施することになります。
ただし、口頭意見陳述は合議体(担当審判官・参加審判官)や分担者(担当審判官の命により調査審理に従事する国税審査官)をはじめ、原処分庁の担当者など参加者が多く、これら審理関係人との調整が必要となることは避けられません。

2.「正当な理由」の運用

口頭意見陳述は、一定の期間を指定するのではなく、特定の日時等を指定して実施するものですので、例えば、指定された期日の当日に、申立人が急病を発症することも考えられます。
この場合において、担当審判官は、国税通則法基本通達97の4-6のロに定める「不服申立人の責めに帰すべからざる事由」を限定的に解することなく、申立人の事情を十分に斜酌して柔軟に対応すべきでしょう。
また、指定した期日に申立人及び原処分庁は出席したが、申立人以外の請求人又は参加人が出席しなかったとしても、申立人は陳述を行うことができ、原処分庁に対する発問権の行使もできますので、担当審判官は、改めて期日を設定する(延期する)ことなく、当日に口頭意見陳述を行うことになります。
なお、当日出席しなかった申立人以外の請求人又は参加人に正当な理由があると認められない場合には、当該者に対して改めて口頭意見陳述の機会は与えられません。

3.審理手続が終結した後に口頭意見陳述の申立てがあった場合

担当審判官や分担者は、審理が終結した後に口頭意見陳述の申立てがあった場合には、申立人に対し、審理手続が終結していることから口頭意見陳述は行うことができない旨を説明することになります。
これは、審理手続が終結されると、審理関係人による主張立証ができず、裁決が発出されるのを待つしかなくなるからです。

4.担当審判官として口頭意見陳述を主宰する側の印象

担当審判官としては、口頭意見陳述の申立てがあれば、少なくとも1度はその機会を与えなければなりませんが、正直な印象としては、申立てのある審査請求人に対しては身構えるというか、注意深く対応しないといけないという気持ちが働いていたように思います。
口頭意見陳述は、書面では表現しきれない請求人の主張を口頭によって補充させることによって、担当審判官に自己の請求の理由を直接伝えられることに意味があるとされているところ、完全に私見になりますが、書面で表現しきれない主張というのは、「課税要件の該非」や「原処分の取消しの要否」という点においては必ずしも意味のあるものとは限らず、むしろ、課税要件とは直接関係のない苦情等が含まれる確率が高くなり、口頭意見陳述が苦情処理のガス抜きの機会になってしまっているようにも思います。
特に、平成26年改正法による口頭意見陳述は原処分庁に対する発問権が付与されましたが、これを聞き及んで、「調査官本人又は税務署長本人を口頭意見陳述の場に引き摺り出して、担当審判官の面前で、税務調査時の対応の不満を面罵してやりたい」という動機の下に口頭意見陳述の申立てを行うというケースもなくはありません(実際には本人が出席することはなく、不服申立て担当者や課税部審理課の担当者が出席するのですが)。
また、口頭意見陳述が代理人(弁護士や税理士)の請求人に対するアピールの機会として利用されるようなケースもあるのではないかと思われます。
具体的には、審理の終盤になって口頭意見陳述の申立てがあり、「追加の主張がされるのだろうか」と思って臨んだところ、これまでの主張のサマリーを申立てられたに過ぎず、まるで代理人が請求人に対して「積極的に代理活動を行っていますよ」とアピールしているかの如き印象を抱いたことがありました。
口頭意見陳述は請求人に認められた権利ですし、それを自らの主張立証活動に活かせるのであれば積極的に申立てれば良いと思うのですが、設けられている趣旨に適った運用ができているケースがどれだけあるのだろうかという気がしないでもありません。
これまで15回にわたって述べた国税不服審判所(担当審判官)側の対応を予め把握した上で、効果的な陳述を行われることを願って止みません。

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