【0232】口頭意見陳述の留意点(その14)

1.補佐人の陳述における留意事項

担当審判官は、補佐人が申立人の意に反する陳述をした場合又は申立人の陳述を妨げた場合には、補佐人に対し注意を促し是正させるほか、状況に応じ、補佐人の発言を差し控えさせて、申立人自らが陳述するよう促すことになります。
また、担当審判官は、補佐人の言動により喧騒、混乱の状態となった場合には、直ちに補佐人の陳述を打ち切ることになります。
また、補佐人の陳述内容が同じことの繰り返しに終始し、いたずらに時間を空費してそれ以上補佐人による陳述を聴取する実益がないと認められるに至った場合も同様となります。
担当審判官は、補佐人の陳述を打ち切った場合であっても、申立人には口頭意見陳述の機会を与えなければならないことから、申立人のみで口頭意見陳述を行う意思があるかどうかを確認すべきでしょう。
その結果、申立人のみで口頭意見陳述を行う意思がある場合には、補佐人を退席させた上で、申立人による口頭意見陳述を続行することになります。
しかし、申立人にその意思がない場合には、担当審判官は、口頭意見陳述の終了を宣言することになります。
なお、口頭意見陳述録取書の作成に当たっては、通常、申立人及び補佐人に署名押印を求めることになりますが、補佐人の陳述を打ち切って退席させた場合には申立人の署名押印のみを求め、口頭意見陳述実施記録書には、補佐人の陳述を打ち切って退席させた旨を記録することになります。

2.補佐人の陳述の記録、押印等

担当審判官は、参加審判官又は分担者(担当審判官の命により調査審理に従事する国税審査官)に指示して、補佐人の陳述の要旨を申立人の「陳述録取書」に補佐人の陳述であることを明らかにして、その旨を記録させ、申立人及び補佐人に対して署名押印を求めることになります。
なお、担当審判官は、申立人に対して補佐人の陳述に誤りがないかどうかを確認し、申立人が補佐人の陳述について意見を述べた場合には、その旨を当該「陳述録取書」に記録することになります。
なお、申立人が補佐人の陳述を直ちに取消し又は訂正しない限り、当該陳述は申立人の陳述とみなされます。

3.口頭意見陳述の終了

全ての陳述並びに質問及びその回答を終了した場合は、担当審判官は、口頭意見陳述の終了を宣言します。
口頭意見陳述は請求人又は参加人の申立てを受けて行うものですが、担当審判官は、必要に応じ、審理手続を効率的に進める観点から、口頭意見陳述の終了後、申立人を含む審理関係人に対して主張の確認を行うほか、審理関係人が一堂に会している機会を捉えて、今後の事件に関する予定の聴取を行うなど、主張整理や審理手続についての予定の聴取を行うことがあります
また、予定された証拠の提出がされていない場合には、当該証拠の早期の提出を促されることもあります。
なお、主張整理や今後の予定の聴取については、担当審判官が国税通則法第97条の2に規定する「審理手続の計画的遂行」の履行を宣言して行うものでない限り、同条の規定に基づく意見聴取には該当せず、飽くまで任意のものと整理されます。

4.口頭意見陳述と同席主張説明との関係

口頭意見陳述が設けられた趣旨(書面のみでは十分に主張を尽くせない部分を補充させること)及び目的(簡易迅速、公正な審理に資するため)と、口頭意見陳述とは異なる「同席主張説明」の手続を設けた趣旨(事件の理解を共通にし、主張及び争点を明確にすることによって、適正かつ迅速な審理に資するとともに、審判の透明性の確保を図ること) とは異なることに加え、口頭意見陳述は、請求人又は参加人のみが意見陳述及び発問権の行使ができるのに対して、原処分庁はこれをすることができません。
したがって、口頭意見陳述が全ての審理関係人を招集して行うこととされたこと、また、請求人側に原処分庁に対する発問権が付与されたことをもって、同席主張説明を実施する意義がなくなったわけではありません
しかしながら、口頭意見陳述も同席主張説明も、原則として、全ての審理関係人が出席して行われる手続であることには変わりがなく、同席主張説明においても、請求人の疑問について、担当審判官を介する形で原処分庁に対して質問し回答させるという運用を行っていることから、口頭意見陳述の申立て及び発問権の行使が行われる事件についても、その機会を通じて、国税通則法の趣旨を没却しない範囲内で、担当審判官による主張及び争点の整理を行うことが、事件処理の迅速化に資するものと考えられています。

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