【0194】首席審判官への権限の委任


1.殆どの事件は支部で処理

国税通則法第113条は、審査請求の処理に関する本部の国税不服審判所長の権限を、国税不服審判所の支部の首席国税審判官(いわゆる各地域の国税不服審判所長)に委任することができる旨を規定しています。
国税不服審判所は、機構の面からすると全国一体の組織に属するものですが、納税者の便宜と事件の能率的な処理に資する見地から、全国に12か所の支部(いわゆる各地域の国税不服審判所)が置かれています。
そこで、法に基づく本部所長の権限は、わずかな例外を除いて、各支部の首席国税審判官に委任されており、この結果、殆どの事務が支部限りで迅速に処理することができるように規定されています。

2.委任される権限

裁決権及び裁決権に関連する権限を除き、国税通則法上国税不服審判所長の権限とされている次に掲げる一切の権限です。
❶災害等による不服申立期限の延長(法11条)
❷相続人に対して国税不服審判所長又は国税審判官が発する書類を受領する相続人の代表者の指定(法13条2項)
❸審査請求書の補正要求及び職権補正(法91条1項)
❹答弁書の提出要求及びその副本の審査請求人への送付(法93条1項、3項)
❺担当審判官及び参加審判官の指定(法94条1項)並びに担当審判官の指定又は変更の通知(国税通則法施行令33条)
❻裁決があつた後の証拠書類等の返還(法103条)
❼数個の不服申立てについての審理の併合及び分離並びに当初更正・再更正等のあわせ審理(法104条1項、2項、4項)
❽不服申立てに基因する徴収の猶予、滞納処分の続行の停止又は差押えをしないこと若しくは既にされている差押えの解除の求め及びこれらの求めに係る猶予等の処分の取消しについての同意(法105条4項、5項、7項、令37条2項)
❾特定承継人に係る不服申立人の地位の承継の許可(法106条4項)
❿共同不服申立人の総代の互選命令(法108条2項)
⓫利害関係人の参加の許可及び参加の求め(法109条1項、2項)

3.裁決権に関する委任

裁決権については、本部所長は、その裁決が国税庁長官の通達に示されている法令の解釈と異なるとき及び他の国税に係る処分を行う際における法令解釈の重要な先例になると認められるときは、あらかじめその意見を国税庁長官に通知しなければならない(法99条)ことなどの関係もあつて、裁決権を直ちに委任することには問題があると考えられています。
また、裁決は審査請求に対する国税不服審判所の最終的な判断を示すものであるところから、裁決権を法律上の委任事項とはせず、内部的に首席国税審判官に委任することにしたとされています。
つまり、本部所長において裁決庁としての法令解釈の統一を図り、法第99条に基づく執行機関と裁決機関との間における法令解釈の調整を行うことによつて、行政責任の所在を明確にする趣旨とされています。

4.権限委任の例外

審理の過程において本部所長が国税庁長官に対して意見の通知をしなければならないと見込まれる事件であることが明らかとなったもの(法99条1項)その他事件の内容から、本部所長が審判所本部に勤務する国税審判官を担当審判官として事件の審理に直接当たらせることを適当と認めた場合が該当します。
この場合の手続としては、本部所長はその旨を首席国税審判官に通知することになりますが、その旨の通知がされたときは、その時以後における当該事件に係る審理の権限は本部所長自ら行使することとなるとされています。
通知をした時以後と限定しているのは、支部の担当審判官の下で一旦審理が開始された後に本部の担当審判官を指定する必要があると認められた場合には、審理の重複を避け、迅速な救済を図る立場から、その通知前に支部においてされた処分又は審理は、前記の通知後においても有効な処分又は審理として本部での審理手続に承継させるものとすることとし、このことを明らかにしたものであるといわれています。
なお、本部所長は、審判所本部に勤務する国税審判官を参加審判官として関与させる必要があると認めたときは、審理の権限は支部の首席国税審判官に委任したまま、審判所本部に勤務する国税審判官又は国税副審判官を参加審判官に指定することができます。

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