【0195】国税不服審判所の裁決書1本当たりの原価



1.国税不服審判所の年間予算規模

国税庁は、令和2年12日21日、令和3年度政府予算案の確定を受けて、国税庁における「予算の概要について」を公表しました。
公表は「機構・定員関係」と「経費関係」に分かれており、これを見るだけでは人件費総額が明確にわからないのですが、「経費関係」の「国税庁(636,463百万円)」から「一般経費概要(庁局署一般経費など11項目の計79,865百万円)」を控除した556,598百万円が人件費であると仮定します。
また、「機構・定員関係」によると令和3年度末の国税庁全体の定員は55,954人に対して、「(令和3年度財務省所管)一般会計歳出予算各目明細書」によると国税不服審判所の定員は469人であることがわかります。
そうすると、国税不服審判所に係る人件費は約4,665百万円程度であると想定されます。
ちなみに、上記の各目明細書に国税不服審判所の人件費内訳の記載はありますが、法定福利費や退職手当は国税庁全体の予算額しか記載されていませんので、上記のように概括的に推算しています。
ちなみに、国税不服審判所の創設50周年時に公表した「国税不服審判所の50年」においては、令和2年度の人件費を4,646百万円と記載していますので、上記の推算は概ね妥当なものでしょう。
上記4,665百万円に、上記「一般経費概要」の「国税不服審判所経費」166百万円を加えた4,831百万円程度が国税不服審判所関係の予算規模であると想定されます。
上記のとおり、定員は469人ですから、定員1人当たりの人件費(法定福利費・退職手当等を含む)は約1,030万円程度になり、これは国税庁全体の1人当たりの人件費よりも多少上振れしているものと想定されるところ、これは、国税不服審判所が相対的にベテラン職員(職位の高い職員)によって構成されていることに基因します。

2.年間裁決書本数の水準

「【0192】国税不服審判所の年間裁決書本数の実際(https://trusty-board.jp/blog/15746/)」において、令和3事務年度(令和3年7月1日から令和4年6月30日)に国税不服審判所の12の支部(各地域の国税不服審判所)から発出された裁決書本数を354本と集計しました。
国税不服審判所は、令和3会計年度(令和3年4月1日から令和4年3月31日)において2,282件の審査請求について裁決していますが、これは【0192】の記載のとおり「処分件数ベース(「税目別」「年度別」「(相続税の)納税義務者別」「重課は別」)」であって、裁決書(本数)ベースはその6.4分の1程度にすぎません(両者には3か月間の集計期間の差異があるので正確な分数にはなりません)。

3.裁決書1本当たりの原価

上記1.の4,831百万円を上記2.の354本で除すると、裁決書1本当たりの予算(会計でいう原価)は1,300万円台に達することになります。
国税不服審判所に対する審査請求は無料で行うことができることから、これらは全額国費によって賄われていることになります。
もちろん、この1,300万円台という原価は、事案の難易度や取消しを求める税額は様々であり、何百億円規模のグローバル企業における外国税制から数万円規模の個人事業者の加算税までをおしなべての数字になります。
しかし、裁決書1本が出来上がるに際してこれだけの国費が投入されている以上、各々の裁決によって示された判断のプロセスについて、現在・将来の納税者を支援する税理士(公認会計士)・弁護士や税法の研究者がこれを利用しないというのはもったいないという外ありません。

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