【0193】行政不服審査の非公開と裁決公表との関係

1.審査請求は非公開

国税不服審判所長が発出した裁決は審査請求人や原処分庁といった当事者を拘束するものであり、また、審査請求は司法のような公開の場で行われるものではないため、行政不服審査が原則として非公開であるのと同様に、公開されることを前提とした制度設計ではありません。
しかし、国税不服審判所は、現在は3月、6月、9月そして12月の下旬に最近の四半期ごとに発出された裁決のうち、下記に述べる基準に従って有用と認められるものを公開しています。
それでは、なぜ、裁決結果が公表されるのでしょうか。
また、公表するとしても、公開を前提とせずに審査請求に及んだ審査請求人に対して、事前の了解が必要ではないかともいえます。

2.裁決公表の事務運営指針

国税不服審判所においては、従来(創設以来)より、納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の確保に資するとの観点から、先例となるような裁決については、固有名詞を匿名にするなど、審査請求人等の秘密保持に配意した上で、裁決結果を公表することとしています。
平成12年9月8日付国管管2-2「裁決の公表基準について」(事務運営指針)において、下記のとおりに定められています。
納税者の適正な申告及び納税のために有用であり、かつ、先例性があるもの
適正な課税・徴収の実務に資するものであり、かつ、先例性があるもの
・その他、納税者の正当な権利利益の救済等の観点から審判所長が必要と認めたもの
ただし、審査請求人等の秘密保持に配意する必要から、
審査請求人等が特定されるおそれのあるもの
・審査請求人等の営業上の秘密が漏れるおそれのあるもの
などは公表しないこととしています。
したがって、公表するものについては、固有名詞の匿名処理などを行い、審査請求人等の秘密保持に配意していることから、国税不服審判所としては、事前に審査請求人等の了解が必要とは考えていないようです。

3.実際の運用

裁決がなされた時点で、開示請求がなされることが想定される事案(例えば、取消裁決は、税理士業界や学界からの関心が高く、請求がなされることが通常です)については、あらかじめマスキング作業が行われることが多いようです。
また、そうでない事案についても、請求がなされた場合には、当該事案の所掌する審判部の担当者が現在も在籍している場合にはその者が、人事異動後については部長審判官(又は総括審判官)が指名する者がそれぞれマスキング作業を行い、匿名処理の適切性について確認を受けた上で、開示請求の請求人に供されることになりますが、請求後に作業を行う場合、請求する裁決書の分量などから、情報公開法の要求する開示決定の期限(請求があった日から最高で60日以内)に処理できず、同法第11条の規定により期限が延長されることがあります。

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