【0192】国税不服審判所の年間裁決書本数の実際

1.公表数値には処分件数ベース

国税不服審判所は、毎年6月に、前会計年度の「審査請求の概要」を公表します。
本稿公表時点の最新は「令和3(会計)年度」になりますが、同年度の審査請求件数は2,458件・裁決件数は2,282件となっています。
これを見て、大方の方は、「国税不服審判所は1年間で2,282本の裁決書を発出したのか」と思うでしょう。
しかしこれは誤りです。
なぜなら、上記の件数は「処分件数ベース」であるからです。

2.処分件数ベースとは

例えば、ある法人に対して3事業年度を対象とする税務調査が行われて、その全ての事業年度について、法人税及び消費税に関係する指摘を受けたとします。
そうすると、現在では、「法人税」「地方法人税」「消費税」「地方消費税」の4税目があり、これが3事業年度にわたって増加することになるため、処分件数は12件ということになります。
更に、重加算税が加わると、別カウントになり、上記件数は倍になります。
「法人税」「地方法人税」、「消費税」「地方消費税」は同じ1枚の申告書の上下に分かれており、しかも、後者は前者の税額を課税標準としているだけではないかと思うのですが、あくまで税目・事業年度が分けれれば別の処分となります(処分通知書も別々の書面です)
また、ある被相続人について相続人が5人存在していた場合、現行の相続税は、うち1人の課税価格のみ増加しても、他の4人についても増差税額が発生することが避けられません。
そうすると、税務調査の結果に納得しなければ、5人に対してそれぞれ更正処分がなされることになり、課税価格が増加した1人のみならず、他の4人も審査請求をした場合は、被相続人は同じでも5件のカウントになります。
このように、国税不服審判所が公表している処分件数は「税目別」「年度別」「(相続税の)納税義務者別」「重課は別」であるのに対して、裁決書は税目が異なろうとも納税義務者別にまとめて(相続税の場合は「A山B男ほか4名」という形で1本として)発出されますので、2,282の数分の1の本数になるのです。

3.実際の裁決書本数を調べる方法

それでは、年間の実際の裁決書本数はどの程度なのでしょうか。
国税不服審判所はこれについては公表していませんが、情報公開制度を利用しなくてもほぼ正確に裁決書本数を占う方法があります。
国税不服審判所ホームページの「裁決要旨検索システム」の「キーワード検索」で以下のとおり入力・選択します。

「1.税目」は「全税目」を選択
「2.キーワード」は「。」のみ入力
「3.裁決結果」は「結果指定なし」を選択
「4.裁決期間」は令和3事務年度の場合には「(とりあえず)令和4年6月1日から令和4年6月30日」と入力
「5.裁決支部」は「特定支部」で「札幌」から「沖縄」まで順に選択

「2.キーワード」について、「。」の句読点が含まれない裁決要旨はあり得ないので、これでもれなく抽出させようとしています(入力欄が空白であるとエラーになります)。
「4.裁決期間」について、事務年度は前年7月1日から当年6月30日までの1年間であり、7月1日から新年度の裁決番号がナンバリングされますので、6月末日に最も近い裁決日に付された裁決番号の本数分の裁決書が発出されていることになります。
「5.裁決支部」について、国税不服審判所は全国12の支部から裁決書が発出しているため、上記1.~4.の条件で「札幌」から順に「沖縄」まで選択すれば、各々の支部から発出された裁決書本数が判明します。
なお、小規模の支部においては、6月に裁決書が発出されない可能性があり、検索結果で該当がなければ「4.裁決期間」の初日を「5月1日」にするなどして期間を拡大させます。

4.令和3事務年度の裁決書本数

上記3.の方法で令和3事務年度(令和3年7月1日から令和4年6月30日)までの各支部から発出された裁決書本数「裁決番号」欄の「令3××××」の「××××」の数字のもっとも大きな番号がその年度のその支部の最終の裁決書です)を把握すると、下記のとおりとなります。

札幌6本・仙台15本・関東信越35本・東京135本・金沢6本・名古屋59本・大阪51本・広島13本・高松3本・福岡12本・熊本10本・沖縄9本 計354本

上記1.の公表数値は令和3会計年度(令和3年4月1日から令和4年3月31日)のものですので、正確には3か月間の集計期間の差異は生ずるのですが、裁決書ベースは処分件数ベースの6.4分の1程度になっていることがわかります。
ちなみに、国税不服審判所の定員は471人(令和2年度)であり、上記裁決書本数は定員1人に対して1本にも満たないことになりますが、これは新型コロナウイルス感染症による調査事績の減少により不利益処分の件数も少なくなり、審査請求も減少していることが影響している(コロナ禍前は年間で400本程度はあった)のかもしれません。

税務判断なら当事務所へ
お気軽にお問い合わせください