【0170】事実認定と経験則


1.税務争訟の結論は事実認定次第

民事の裁判では事実認定が大事だとよく言われます。
また、民事事件の裁判の結論は事実認定によってその大部分が決まってしまうものだとも言われています。
ある事実は、それに関わる証拠によって真実かどうかが確かめられます。
このように、ある事実が真実かどうかを証拠によって判断する作業を事実認定と言います。
事実認定は、民事事件の裁判のみならず、税務争訟又はその前段階に位置する税務調査においても重要となります。

2.事実認定は流動的なもの

事実認定は、証拠が出てくるのに応じて、その都度、繰返し見直しが行われるのが通常ですから、必ずしも固定的なものではありません。
有力な証拠によって、こうではないかという見込みをもって一応の事実認定をしても、 また別の無視できない証拠がでてきたときには、前にした事実認定を見直してみることが必要です。
ところで、事実認定をするに当たって基本となるのは、事件について、動かし難い核となる事実をいくつか見つけ、それらを有機的につないでいくことであるといわれています。
動かし難い核となる事実とは、重要な証拠からほぼ間違いないと認められる事実とか、当事者が一致して争わない事実などがこれに当たります。いくつか動かし難い事実をつないでいって重要な事実関係の全体像が、こういう事態があったのだろうという仮説として形成されていくことになります。
仮説はあくまでも仮説にすぎませんから、絶えず見直しが必要になり、仮説に矛盾するような証拠が出てきたときは、これまでの仮説の組立てをご破算にして、新たな仮説を考えてみることも必要になってくるでしょう。 
このように事実認定は、証拠の提出に応じて徐々にできあがっていくもので、証拠と照らし合わせてその内容を吟味していくことが予定された流動的なものですから、できるだけ思い込みに陥らないで、柔軟な姿勢で臨むことも必要です。 

3.経験則の重要性

事実認定では、いくつかの事実から特定の事実を推認して判断するというプロセスが重要で、多くの事件ではこのような事実の推認が中心的な役割を果たしているということができます。
このような蓋然的な判断をする際に手がかりとなるものが、いわゆる経験則と言われるものです。 
経験則とは、人によって使い方が異なるときもありますが、一応、社会生活における経験から帰納される一切の法則のことを言うものとされています。
現在の実務では、社会生活上、通常であればこうなるであろう、という法則的なものを、例外のあり得るものも含めて経験則といっています。 
経験則は私たちの社会生活上の共通認識または常識に似通ったものだと言ってもよいでしょう。 
経験則は、私たちの社会生活のあらゆる面に及びますから、無限といって良いほど実にさまざまなものが考えられます。
このような経験則を用いて、私たちは、いわば常識に従って事実関係の像をつくりあげています。
ただし、経験則を用いる場合に気をつけなければいけないのは例外があるということです。
社会生活の上で大多数はそうだという場合でも、特殊な事情で経験則どおりにいかないこともあり得ます。社会生活の実情は複雑で奥深いものですから、絶えず反対の可能性を念頭に置くことも事実を慎重に認定していく上では必要なことでしょう。

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