【0171】歴代の大阪国税不服審判所長が選んだ在任当時の公表裁決事例(その3)


1.第20代 瀧華聡之さんの経歴

2021.6. 1 定年退官
2019. 5.24 大津地家裁所長・大津簡裁判事
2017.10. 1 熊本地裁所長・熊本簡裁判事
2015. 9.28 佐賀地家裁所長
2015. 4. 1 神戸地裁部総括判事・神戸簡裁判事
2013. 4. 1 検事【大阪国税不服審判所長】
2013. 3.31 大阪地裁判事・大阪簡裁判事
2008. 9. 3 京都地裁部総括判事・京都簡裁判事
2007. 4. 1 大阪地裁部総括判事・大阪簡裁判事
2006. 4.11 大阪地裁判事・大阪簡裁判事
2004. 4. 1 大阪地裁判事
2002. 4. 1 大阪高裁判事
2002. 1.10 大阪地裁判事・大阪簡裁判事
1998. 4. 1 司法研修所教官(東京地裁判事)
1996. 4.11 東京地裁判事
1996. 3.29 東京簡裁判事・東京地裁判事補
1994. 4. 1 石垣簡裁判事・平良簡裁判事・那覇地家裁石垣支部判事補・那覇地家裁平良支部判事補
1991. 7. 1 福岡地家裁判事補・福岡簡裁判事
1990. 4. 1 東京地裁判事補・東京簡裁判事
1989. 4.11 最高裁人事局付(東京地裁判事補・東京簡裁判事)
1988. 4. 1 最高裁人事局付(東京地裁判事補)
1986. 4.11 東京地裁判事補
司法修習第38期

2.瀧華元所長との関わり

私が国税審判官に任官された当時の大阪国税不服審判所長ですが、私が神戸支所という物理的に離れた場所で勤務していたことや、同勤期間が9か月間しかなかったこと、そして、懸案となる審査請求事件について本部照会の結果によって処理方針が決まっていたこともあって、私個人としては特定の事件について突っ込んだ議論になった記憶が薄い印象でした。
私が2回目に国税審判官採用試験を受験した際の面接試験の面接官として相対しており、前回(西川元所長当時)の失敗を活かして面接対策をしっかりしたつもりでしたが、瀧華さんからの「求釈明ってどういうことがわかっていますか?」という質問にしどろもどろになり馬脚を露してしまったものの、何とか採用になりました。
下記の裁決は所得税に関するものですが、相続税関係事件(特に財産評価基本通達が関係するもの)で法規審査部門や国税不服審判所本部との意見の擦り合わせにご苦労なさっていた印象があります。

3.瀧華元所長が取り上げた裁決要旨

青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたというためには、総勘定元帳の保存がない場合には簡易帳簿の提示を求めるべきであったとした事例(平25.11. 1 大裁(所・諸)平25-21・全部取消し)

原処分庁は、調査担当職員が請求人に対して青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず、請求人が当該帳簿書類を提出しなかったことから、所得税法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に当たり、青色申告承認取消処分は適法である旨主張する。
しかしながら、青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたというためには、総勘定元帳の提示を求めるのみならず、当該総勘定元帳の保存がないこと等が確認された場合には、簡易帳簿(所得税法施行規則第56条《青色申告者の備え付けるべき帳簿書類》第1項ただし書の規定を受けた昭和42年大蔵省告示第112号が定める帳簿書類)の提示を求めるべきであったところ、調査担当職員は、請求人からの簡易帳簿の要件を満たす本件各出納帳の提示の申出を拒否するなど、青色申告に係る帳簿書類の備付け状況等の確認を行うために社会通念上当然に要求される程度の努力をしたとは認められないから、請求人に係る帳簿書類の備付け等は所得税法第150条第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に当たらず、青色申告承認取消処分は違法である。

4.瀧華元所長のコメント

課税に対する審査請求は、職権主義で審理判断がされているが、平成26年の国税通則法改正により当事者主義的な観点が導人された。
すなわち、同法第95条の2の口頭意見陳述や、第97条の3の職権収集資料の審理関係人への開示の制度が新設され、平成28年4月から施行されることになった。

私が所長をしていたときは、その施行に向けて、実施の方法を具体的に検討するとともに、現に審理の対象となっていた事件につき、新制度が導入された場合にどのような運用になるかを考慮していた時期である。
本件でも、税務調査の過程や、消費税の課税売上げの項目や課税仕入れの項目について、具体的な認定資料として職権収集資料を用いていたと思われるので、上記のような考慮をするため議論を重ねていたことが思い出される。

瀧華元所長は最近の歴代所長の中でも税務行政の常識(特に通達の位置付け)がそのまま通じづらかったと同勤の国税職員から仄聞したことがありますが、税務行政の常識をそのまま鵜呑みにしては国税不服審判所の存在意義は希薄化するのであって、国税職員にとっては適度な緊張感のあった方ではないでしょうか。

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