【0153】民間出身国税審判官の或る日の日記(その36)

1.平成27年〇月〇日

A審査官が自宅のプリンタでこの間の支所旅行の写真を焼いたDVDを作成していたようだが、DVDの表面まで印刷していてビックリである。
今日も、審査官二人で来事務年度の支所レクリエーションの話をして、「大橋さん、来年度も旅行に行きたいでしょう?」などと問いかけてきたB審査官はもう残留確定と言わざるを得ないだろう。
朝から、午後からの畠山所長の事務視察に備えて、税務大学校における畠山所長の講話資料のチェックをしている。
本所のC審査官がe-nehシステムについての課題提案が認められて国税庁本庁に表彰されに行ったようであるが、それは前事務年度の神戸支所在籍時の提案であるらしい。

ただし、本所異動後に提案した別のシステムについての課題提案については、本人としてはそちらが良い出来と思っていたようだが、それは長い裁決書のチェックのための改良であり、大阪以外は裁決書が相対的に短いので全国的な事務処理の軽減にはつながりませんねということで表彰対象にはならなかったようである。
東京などは、大阪よりも相当裁決書がすっきりしていて「これで良いのか?」と思うくらいであるが、大阪だけが所長が裁判官ということもあって相対的に分厚いのだそうだ。
昨日の回覧で、備品の補充要望が含まれていた(ちなみに、そのリストによると国旗は2,052円だった。)が、自分には関係ないかなとスルーしていたら、A審査官がB審査官に「以前ゴム部分が取れてイライラしておられたので、数字判を買っておきましょうか?」と提案していた。
本部所長随行の審判官は案の定国税庁キャリア官僚で自分よりも6歳下であり、ここ数年毎年異動しているが、1年ごとに仕事が変わって腰を据えて仕事ができるのか疑問ではある。

副審判官が担当しているD事件については、副審判官が煮詰まっていて、A審査官の案を丸のみしたい感満載のコメントを言っている。
サマータイムの運用についての伝達事項が回ってきたが、審判所支部(支所)は1時間の早出勤務を7月の異動期から8月末までの期間のうち5日以上ローテーションで実施するということになるようである。
しかし、「導入するなら一斉にしないと意味がないし、支所は税務署庁舎の間借りであるのでどうするんだ?」とみんなで言っていた。

2.本部所長事務視察

総括審判官が午後2時過ぎに官用車に乗って新神戸駅に向かった。
事務視察後の懇親会は総括審判官と随行の本部審判官の間の配席になっていた。
14時45分頃に総括から連絡があり、今から官用車で支所に向かうとの連絡があった。
副審判官は、AB両審査官に「来客の時に限ってトイレが詰まったりゴキブリが出たりするかな?」とか言っていた。
ほぼ15:00に到着したが、本部審判官はやはり若い感じだ。
支所長による支所概況の説明が長引き、各職位単位のグループ面談開始。
総括から「何を聞かれたか教えてくださいね。本所に送りますので。」と言われて以下の内容を送信する。
質問は「1年(3年)経験してどうですか?」のみ。
3年目の弁護士出身審判官は、概要以下の内容を言っていた。
・思っていた以上に緻密に資料収集・証拠評価などをしている。訴訟をしていてもなかなか国税には勝てない。
・案外、国税プロパーの人が「自分だったらこんな調査はしない」として取消しを検討しているのが意外であった。
・民間出身審判官がいれば認容割合が上がるのでは?という外部の税理士や学者の期待があるようだが、そんなに単純な話ではない。
・開業弁護士と違い事件に没頭できるのがありがたい。そういう意味で卒業したくないという気持ちもある。
1年目の自分は、概要以下の内容を言った。
・審判官もさることながら初めての公務員ということで日々新鮮、日々勉強である。
・本部所長、支部所長の関与が思いのほか多いのが意外である。
・会計出身、法曹出身が相互に同期を取って足らないところを補えば議決の質の向上につながる。
・裁決書1件あたりの予算を考えると贅沢な組織であり、反面、国費で勉強できるというありがたい立場でもある。
畠山所長からは、以下のコメントがあった。
・裁決の質的向上の測定は難しいが、だからといってあきらめるわけにはいかない。
・私は貪欲なので、民間出身審判官には今までの知識経験の全てを出して卒業してほしいと思っている。
・労働生産性の指摘も含めて民間出身の立場で日頃から率直に発言してほしい。
平成28年施行の国税不服申立制度改正の話がまったくなかったのが意外(というか時間オーバー)である。
副審判官が、AB両審査官に対して「『異動まであとわずかで仕事を流すだけのAです。審判所に来たくないのに来たBです』って言ってみたら?」と弄っていた。
審査官に対しては、「人間関係は大丈夫ですか?言いたいことは言えていますか?」という質問もあったそうで、B審査官は「あと2~3年頑張ります」と口を滑らせてしまい、A審査官が「言ってしもた」と後で食いついていた。

3.本部所長を交えての懇親会

17時過ぎに畠山所長と本部審判官はホテルにタクシーで向かい、総括が随行していた。
自分は支所長と主任審判官と弁護士出身審判官と一緒に三宮の萬壽殿に向かい、生田神社で時間調整しながらも早めに着いた。
18時過ぎに到着され、きっかり2時間で終了。
自分が「国費で勉強させてもらっていることがありがたい。じっくり取り組めるし」という話をすると、「そう言ってもらえるとこちらもありがたくて、審判所は実践の場がある大学院のようなものだし、経験をしっかり積んで卒業してほしい」という話があった。
民間出身審判官の採用面接の時の話で、当時の大阪国税不服審判所長であった「西川(知一郎)さんに突っ込まれた」と言ったら、所長は「彼は厳しんだよな~」と言っていた。
主任審判官がいつになく自分に突っ込んでくるな~と思ったが、話題が自分に振られるのを避ける防御の意識が働いていたのかもしれない。

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