【0168】国税分野にも影響した行政不服申立制度の抜本的な改正


1.不服申立ての手続の一元化

行政不服審査制度は昭和37年の制度創設以来、半世紀ぶりの抜本的な見直しが行われ、以下に概説する新たな行政不服審査制度が平成28年4月から施行されています。

改正前の制度では、異議申立ては審査請求と比べ、審理手続において客観的かつ公正な審理手続の保障が不十分な面があり、不服申立手続の権利保護のレベルが異なるのは不合理であること、また、複数の申立ての種類があることは分かりづらいなどの問題が指摘されていました。

改正後の制度では、「異議申立て」を廃止し「審査請求」に一元化することとされましたが、この例外として、処分庁以外の行政庁に審査請求をすることができる場合において、要件事実の認定の当否に係る不服申立てが大量にされる国税・関税の処分のように、当該処分について再調査する意義が特に認められるものについては、個別法に特別の定めがあるときに限って、「再調査の請求」をすることができることとされました。

2.審理員制度の導入

改正前の制度では、審理手続を行う者について法律に規定がなく、原処分に関与した者が審理手続を行う可能性が排除されていませんでした。

改正後の制度では、審理手続の公正性・透明性を高めるために、審査庁は、審査庁に所属する職員のうちから、処分に関する手続に関与していない等の一定の要件を満たす者を審理員として指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等に通知しなければならないことを法律上明確にしました。

3.標準審理期間の設定

行政手続法では、標準処理期間(申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めることが規定されていましたが、改正前の行政不服審査法には審理期間に関して定めた規定はありませんでした。

改正後の制度では、審理の遅延を防ぎ、審査請求人の権利利益の迅速な救済を図る観点から、審査庁が審理期間の目安となるものとして、標準審理期間(審査請求に対する裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、それを適当な方法により公にしておかなければならないことが規定されました。

4.不服申立期間の延長

改正前の制度では、審査請求は、「やむをえない理由」があるときを除き、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならないとされていました。

改正後の制度では、審査請求人の不服申立ての機会を保障する観点から、主観的審査請求期間を3か月に延長するとともに、この期間を経過しても「正当な理由」があるときは審査請求することができることとしました。

5.審理手続の計画的進行

改正前の制度では、審査庁が審査請求人と対峙する形式の審理の構造でしたが、改正行政不服審査法によって審理員制度を導入したことにより、審査請求人と処分庁等が主張及び証拠を提出し、これを基に審理員が意見書を作成するという対審的な審理の構造となりました。

この対審的構造の審理手続を迅速に行うためには、審理を計画的に進めることが必要であり、かつ、審査請求人、参加人及び処分庁等の審理関係人が、審理を迅速に行うとの認識を共有し、相互に協力することが必要不可欠となります。

そういった観点から、審理関係人及び審理員に、審理において、相互に協力するとともに、審理手続の計画的な進行を図らなければならないとする一般的な責務を課す規定が設けられました。

6.口頭意見陳述における質問権

改正前の制度では、審査請求人等が口頭で意見を述べる機会(口頭意見陳述)を有していましたが、処分庁等がその場に同席することは規定されていませんでした。

改正後の制度では、審査請求人等から申立てがあれば、全ての審理関係人を招集して口頭意見陳述の機会を与えなければならないことが規定されました。

また、口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して質問を発することができることとされました。

7.審理手続の計画的遂行

審査請求に係る事件について、審理すべき事項が多数であり又は錯綜しているなど事件が複雑である場合などで、一定の審理手続を計画的に遂行する必要があると認める場合があります。

そこで、審理員は、迅速かつ公正な審理を行うため、審理関係人を招集し、あらかじめ、これらの審理手続の申立てに関する意見の聴取を行うことができることとされるとともに、それ以降の手続が計画的にされるよう、審理員が審理手続の期日等を決定した上で、審理関係人に通知することが規定されました。

8.審査請求人等による提出書類等の閲覧・謄写

改正前の制度では、審査請求人等が閲覧を求めることができる対象は処分庁から提出された書類その他の物件に限られ、また、その写しの交付を求めることは法令上規定されていませんでした。

したがって、国税の不服申立てにおいても閲覧しか認められず、閲覧した者は閲覧内容を適宜の紙に引き写すといった、にわかに措信しがたい実務が行われていたのです。

改正後の制度では、審査請求人等が写しの交付を求めることができることが法令に明確に規定され、その対象についても、処分庁等から提出されたものに限らず、審理員からの物件の提出要求に応じて処分庁等以外の所持人から提出された書類その他の物件等が含められるなど、範囲が拡大されました。

9.審理手続の終結

改正前の制度では、審理手続を終結したことを審理関係人に伝える手続は規定されておらず、裁決が発せられるまでは、制度的には主張立証が可能であったことから、裁決までの審理手続に支障をきたす事態も想定されていました。

改正後の制度では、審理員は、必要な審理を終えたと認めるときには、審理手続を終結することとし、速やかに、審理関係人に対し、その旨を通知することが規定されました。

また、審理の遅滞を避け、迅速な裁決を実現する観点から、弁明書や書類その他の物件等が相当の期間内に提出されないときなどにも、審理手続を終結することができることとされました。

10.第三者機関(行政不服審査会等)への諮問手続の導入

改正前の制度では、第三者機関が審理に関与しているものは、国民の権利利益の保護の観点から個別法で規定があるものに限られていました。

改正後の制度では、審査請求についての裁決の客観性・公正性を高めるため、第三者の立場から、審理員が行った審理手続の適正性や法令解釈を含めた審査庁の判断の適否を審査する機関として、総務省に行政不服審査会、地方公共団体には執行機関の附属機関を設置することとされました。

そして、審査庁は、一定の場合を除き、審理員意見書の提出を受けたときは、行政不服審査会等に諮問しなければならないこととされました。

ただし、審査請求人等が諮問を希望しない場合などは諮問を要しないこととされています。

11.不服申立前置の見直し

改正前の制度では、不服申立てに対する裁決を経た後でなければ訴えを提起することができない旨(不服申立前置)を定める特例が規定された法律が多数存在していました。

この不服申立前置について、国民の裁判を受ける権利を不当に制限しているとの批判があり、裁判所の負担等も勘案しつつ、行政不服審査制度の見直しの一環として見直すこととされました。

この見直しによって、国税関係の異議申立て及び審査請求を含め、二重前置を求めるものは全て解消することとなり、不服申立前置を定める特例規定が存在した96法律のうち68法律で廃止・縮小が行われました。

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