【0140】民間出身国税審判官の或る日の日記(その26)

1.平成27年〇月〇日

近畿税理士会支部の研修まで1か月となったが、そろそろレジメを研修担当者に送付しておいてくださいねと管理課長補佐に言っておかなければ。
新審判所長の略歴が配付されたが、昭和38年1月生まれということで、自分と学年で10違うことになるが、その割には老けている感じがする。
副審判官も「自分より学年で2つも下なのにおっさんやな~」と言っている。
略歴を見ていると判事補から判事になるには10年くらいかかるのか。
木曜日の視察時に簡単な自己紹介をすることになるらしい。

(補足)
私が所属していた近畿税理士会の支部から研修の講師依頼がありました。
本当は依頼者は講師を選べないのですが、「ウチの支部から審判官が出ているので是非」ということで事実上のご指名をいただきました。
近々実施される新審判所長の神戸支所視察に当たり、大阪本所の管理課から所長の裁判官としての略歴を送付してもらい、それを事前に確認していました。
大阪国税不服審判所長は、京阪神の地方裁判所の民事部の部総括判事(裁判長)クラスが、大阪高裁判事級(実際には大阪高検検事)として着任することになり、現在の西村欣也所長も同様です。

2.人事評価結果面談

平成26会計年度期末と27会計年度期首の面談を支所長から受けた。
人事評価の標語(ランク)としては「S・A・B・C・D」のうちの「A」ということだった。
「税理士の経験だけではなく会計士としての外部監査経験も活かしている」というコメントを得たのはありがたいが、「A」が40%程度も居るそうなので、自己評価からすると大甘な評価という感じである。
この働きぶりで年収930万円(任地が神戸の場合)なんて、民間(特に会計事務所業界)だったら怒るだろう。
「C・D」になってくると賞与(勤勉手当)の査定にも影響するそうであるが、ほとんどいないようであり、このあたりが民間と違うところだ。

(補足)
総括審判官に手取り足取り教えていただいてやっと職務をこなしていたため、自己評価としてはかなり低いものでしたが、蓋を開けてみれば「A」評価で驚きました。
しかし、民間出身国税審判官は、国税不服審判所本部で本部所長自ら面接して採用しているために、能力がなくても悪い評価をつけることができないのかな?などと思っていました。
詳細については「【0020】国税審判官の人事評価(https://www.trusty-board.jp/blog/1488/)」を参照してください。

3.平成27年〇月〇日

G事件の合議資料案を総括審判官に渡して確認を依頼したが、せっせと直しが入っているようだ。
案の定というか自分の力不足というか、結構手直しが入ったが、
・本人も原処分庁これについてはまったく主張していないので、それを基に求釈明してしまうと梯子を外されて審判所の立場がなくなってしまう。
・あまり深く考えず、本人審査請求の場合は、答弁書がしっかりしていたらそれに乗っかる形で求釈明すれば良いのでは?
というのが指導の眼目であったと思う。

G事件の原処分庁である税務署に対する検査日程は27日の10時開始になったが、昼休みで外を歩いていた時に、副審判官が「9時半開始だったら直行できたでしょうに、10時開始だったら8時半にいったんここまで出勤しないといけないじゃないですか。審査官はその辺り気を回せばよいのに。」と言っていた。
午後からは、合議資料の修正と求釈明事頂の修正をして終わる。

(補足)
弁護士や税理士といった代理人が選任されていない本人請求事件は、苦情と課税要件に沿った主張との峻別が難しい事案が多く、請求人の主張を起点に原処分庁の主張を対比させることが難しい事例がありました。
その場合には、原処分庁が答弁書において記述している主張を起点に請求人の主張を対比させた方がより真面になることがあるというのが、国税不服審判所の経験の長い総括審判官の意見でした。

副審判官は、審査官の段取りの悪さ(気配りが行き届いていないこと)に苦言を呈していましたが、原処分庁の場所は私の自宅と神戸支所との間に位置していたので、確かに、いったん支所に8時半に出勤するよりも、直行した方が私の自宅を出発する時間に余裕が生ずることになります。
出張先の税務署は支所から1時間程度かかるため、「9時半開始にすると、8時半に支所に出勤してすぐに出ないといけなくなるから直行が認められることになるが、10時開始で直行にすると、8時半から9時までの30分間は職場離脱していることになり、懲戒の対象になり得る」ということです。
いかにも公務員組織らしい思考です・・・。

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