【0106】民間出身国税審判官の或る日の日記(その9)

1.平成26年〇月〇日

A事件の代理人弁護士が執筆した書籍を通勤電車で読んでいるが、全体の3分の1くらいは「過去にこんな経験をしたんだぞ~」みたいな自慢話のような感じがする。

(補足)
請求人面談を間近に控え、ちょうど代理人弁護士が過去の自分の経験を基にした書籍の新聞広告が掲載されていたので、通勤の電車の中で読んでいました。
税務調査における調査官も同様かもしれませんが、納税者が選任した代理人の経歴や得意分野についてはできるだけ事前に把握して、面談に臨みたいと考えていました。
何せ、請求人面談は限られた時間でこちらの問いに対する答えを引き出し、それを書面に取りまとめないといけませんので・・・。

2.初めての臨場調査

官用車でB事件の自宅周辺と販売活動をしていたエリア付近を視察。
審判所長の官用車といっても黒塗りというわけではない。
運転手付きはありがたいが、それはそれで行程の事前案内や何やらで気を遣う。

(補足)
審判所長は国税局長並みの格付けであり、公用車・運転手も用意されていますが、車種は忘れたものの長年乗っているであろうフェンダーミラーの車両で、特別高級感のあるものではありませんでした。
しかし、たとえ所長車といっても利用頻度が少なければ廃止の可能性があり、「年間4,000㎞・年間100日以上(例)稼働しなければ廃止の検討対象になるため、業務で必要な場合には積極的に利用してください。ただし、所長・次席審判官の使用を優先します。」といったアナウンスがありました。
車両の維持コストよりも運転手を常勤雇用する人件費の方がはるかに高いですので・・・。

その場の雰囲気はよくわかったが、請求人本人が実際に出入りするエリアの特定までには至らなかった。
これ以上は請求人本人から面談で直接聞くしかないだろうが、どこの場所でもウェルカムで迎えられているわけではなさそうだ。
近隣の事業所に名刺を持って質問しようとしたが、「国税関係ですけど」と言うと受付担当者の顔色が一瞬変わって、後ろにいる責任者がいるかどうかをちらっと確認するのがわかる。

(補足)
具体的な質問調査が目的ではなかったため、臨場調査というよりは視察の性格が濃いものでしたが、たとえ国税不服審判所は権力行政ではない(権利救済機関)といえども、一般人が咄嗟にそれを理解することは難しく、「国税」が表示された名刺を渡した時の先方の狼狽にこちらも戸惑いました。
請求人面談で事実関係をお聞きする場合に、本人は自らの事業を当然の前提としてお話になるものの、こちらはその前提がわからない状態でお聞きして文章まで取りまとめることになるため、請求人の活動する場所のイメージだけでも事前につかんでおきたかったことから、面談の前に現地を確認することにしたのです。

3.代理人のコントロール

C事件の代理人税理士から「週初めに求釈明事項の回答と質問事項の回答を送る」と言われていたが、まだ届いていないので電話したところ、どうやら月曜日の夜に投函したようだ。
「質問事項は本人しかわからないので、週末の面談時に直接間いてほしい。」と言われたのは理解できるが、求釈明事項について、請求人本人としっかり内容共有できているかが疑問である。

(補足)
主張整理のための求釈明事項は、請求人本人と協議の上で代理人に回答していただいても良いのですが、証拠収集のための質問事項は、経験した当事者ご本人に回答していただかなければ証拠力が期待できません(代理人が回答しても「伝聞」になります)。
審判官としては、代理人は請求人本人とコミュニケーションを取りながら適切にコントロールできていることを前提としたいのですが、中にはそうとはいえないようなケースもあり、例えば、代理人が審判官の要請を理解できず請求人本人にうまく伝えられないケース、代理人が請求人本人の了解を得ず主張を構築していると思しきケースなどがありました。

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