【0158】審査請求事件には法規審査が介入する


1.法規・審査担当者の存在

裁決の処理に関する権限を国税不服審判所本部所長から内部委任された支部所長(各地域審判所長)は、裁決を行うに当たり、判断の統一性を確保し適正な裁決をするため、法規・審査担当者を指名します。

この理由は、法規・審査担当は、担当審判官・参加審判官による合議体による議決前の段階においては、調査及び審理の過程において生ずる法令の解釈又は法令若しくは通達の適用について意見を求められた際に、遅滞なく事件についての的確な意見を述べるほか、合議にオブザーバーとして積極的に参加し、必要に応じて適切な助言をするなど、合議体の補助機関として事件に関与する役割を担わせているためとされています。

さらに、合議体による議決後においては、適正な裁決がなされるよう、裁決書(案)の法規審査、事実審査及び文書審査を行わせるなど、法規・審査担当は支部所長を補佐する役割も担っています。

なお、法令の解釈については、全国的な判断の統一性を確保する観点から、また、裁決が本部所長名でなされることに鑑み、法規・審査担当者は、法令の解釈が困難なもの等について、本部と協議を行う窓口の役割を担っています。

2.具体的な関与方針

更に敷衍して説明すると、法規・審査担当が合議のオブザーバ一として参加するのは、合議体による議決に審理の不尽、法令の解釈又は法令若しくは通達の適用の誤り等が生じないように、合議体に多角的な検討を促すような助言をするためと考えられています。

また、審査請求人と原処分庁(併せて「審理関係人」といいます)の双方の主張の要点を記載した「争点の確認表」の作成といった審理手続の終結を見据えた主張の確認に当たっては、審理関係人の主張漏れ、不十分な主張整理、課税等要件と全く関係がない誤った争点立て等による審理手続の再開を避けるべく、合議体に適切に助言をする必要があるとされています。

このように、法規・審査担当が合議体の意見に配意しつつ、審査請求事件の調査及び審理に当たって合議体に助言することは、効率的な調査及び審理を促進し、適正・迅速な事件処理に資するものであり、納税者の正当な権利利益の救済といった観点から、むしろ望ましいものと国税不服審判所は考えています。

合議体の意見を尊重するあまりに法規・審査担当の議決前の関与を許さないとすれば、審判所長による裁決方針との相違に起因する事件の差戻しなど、結果として、事件処理が長期化するおそれがあることから、簡易迅速な手続による事件処理という行政不服審査の本旨にも適うものと考えられています。

3.担当審判官としての窮屈感

そうはいっても、合議体、特に担当審判官としては、事件処理の当初の段階の合議から法規・審査担当者がオブザーバーとして参加することに若干の窮屈を感じる者がいないわけではありません。

特に、弁護士出身の担当審判官については、早期から法規・審査担当者による介入・査閲を受けることで合議体内の自由闊達な議論を阻害し、法規・審査担当者の処理方針に沿うような証拠収集・議決書の作成を誘導されているような印象を持つ者がいたような記憶があります。

しかし、裁判所の判決は個々の裁判官(裁判体)の名前で直接判断を下す(裁判官によって意見の相違があっても、それは上級審に進むことによって収斂される)のに対し、国税不服審判所の裁決権者はあくまで本部所長のみであり、その裁決には行政判断の全国統一性を考慮しないことが許されないという特徴があります。

そういう意味からすると、過去の類似事件や国税不服審判所本部における処理方針と整合が得られるようにするための機能が存在することは、行政判断である以上やむを得ないところがあります。

そして、合議体と法規・審査担当者によって処理方針がどうしても異なるようであれば、支部所長の臨席を仰いで事件検討会といった会議体の場で結論を摺り合わせていくしかないのだろうと思われます。

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