【0089】国税不服審判所が求める国税審判官の経験値

1.国税審判官の資格を規定する条文

国税通則法施行令第31条には国税審判官の資格が規定されています。

第三十一条 国税審判官の任命資格を有する者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 弁護士、税理士、公認会計士、大学の教授若しくは准教授、裁判官又は検察官の職にあつた経歴を有する者で、国税に関する学識経験を有するもの
二 (略)行政職俸給表(一)による六級若しくは同項第三号に掲げる税務職俸給表による六級又はこれらに相当すると認められる級以上の国家公務員であつて、国税に関する事務に従事した経歴を有する者
三 その他国税庁長官が国税に関し前二号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認める者

民間出身者は第1号、国税出身者は第2号の規定に基づいて任官されることになります。

2.国税に関する学識経験とは

ここで、疑問であるのは、第1号の「国税に関する学識経験」とはどういった程度の経験であるかです。

私は、税理士試験・公認会計士旧制度第二次試験の合格ですが、だからといってそれだけで「国税に関する学識経験」があるとは思っていませんし、「学識」というと特別な学位を得ているようなイメージもあるところ、私は大学院を経由していません。

国税不服審判所におけるこの「国税に関する学識経験」の運用は、それぞれの資格登録をして概ね10年程度の実務経験があることを目安にしていると考えられます。

これは、国税不服審判所ホームページの「国税審判官(特定任期付職員)の募集についてのQ&A」に、

「今までの仕事内容、経験、資格取得後の年数等を総合的に勘案するものであり、例えば、資格取得後の経過年数のみをもって判断するものでありません。
なお、これまでの採用者の平均実務経験年数は10年程度となっていますが、実務経験3年程度の方を採用した実績もあります。」

という表現をしていることでも察することができます。

3.実際の登用状況

しかし、現実問題として、弁護士・公認会計士・税理士のどの資格者も「資格登録後の10年選手」が登用できているわけではありません。

例えば、税理士は、相対的には10年をはるかに経過したベテランが応募する傾向にありますが、弁護士は、税務争訟分野に力を入れている法律事務所が、資格登録してから間がない勤務弁護士を「国税不服審判所において3年間勉強して来い!」と言って送り出す(応募させる)といったことがあります。

国税不服審判所は国税に関する裁判所のような機関であり、国税に関する官職といえども法曹出身者の需要が大きい組織ですので、一定数の弁護士は確保しなければならず、そういった経緯で応募した弁護士も採用されることがありますが、その弁護士はおおむね30歳台であり(前半のこともあります)、その一方で同じ合議体を構成する国税出身の国税審判官(国税副審判官)は50歳台ですので、そんな世代の異なる3名で事件審理をすることもしばしばあります。

4.需要と供給のミスマッチ

国税不服審判所の本音としては、弁護士は「もう少しベテランに応募して欲しいのに・・・」と思いながら、資格登録後5年以内の者を登用しているケースがあり、それが、上記のQ&Aにおける「実務経験3年程度の方を採用した実績もあります。」の文言に顕れています。

一方、税理士については、過去の例では、あまりにベテランに過ぎ、パソコンの操作に不慣れで裁決書案の自力による起案に支障をきたしたケースもあったようです。

そう考えると、国税不服審判所の期待は「それぞれの資格登録後10年以上を経過して一連の実務を経験したバリバリ働いてくれる層(年齢は40歳台くらい)に来てほしい」というところだと推察されます。

私は、「41歳・税理士登録後16年・公認会計士登録後6年」という状況で任官されましたが、おおむねそんなターゲットには符合していたのかもしれません。

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