【0039】2022年問題と貸家建付地一時的空室の関係

1.生産緑地の2022年問題

資産税に従事される税理士先生であればおそらくご存じであろう「生産緑地の2022年問題」そのものについては、私よりもわかりやすい解説をされる先生方がいらっしゃると思いますので、その先生方の講義にお譲りするとして、ここでは「結果として賃貸物件が供給過剰となり、今にも増して空室が発生しやすくなることが想定される」ことのみ記載します。

2.評価通達26の「一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」

貸家建付地の評価方法を定める評価通達26(2)(注)2に、「課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない。」という定めがあり、貸家の評価方法を定める同93も同様ですが、要するに「一時的な空室であれば賃貸しているものとして評価減をして良い」という取扱いがあります。

この「一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」の解釈については、国税庁タックスアンサーなどで、次のような事実関係を例示しています。

❶各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること。
❷賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと。
空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること。
❹課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと。

これらは例示ではあるものの、❶から❹以外に新たに想定される事実関係に乏しく、事実上は❶から❹を全て満たす場合にのみ該当するとの運用になっているようですが、税務争訟で論点となるのは、客観的に把握可能な❸の空室期間の取扱いであることが多いです。

3.「1か月程度」を超えた空室期間でも一時的空室と判断した事例がある

過去の裁判例でも「〇年〇か月は『一時的』でない(である)」といった判断がなされ、それが税務雑誌に取り上げられて実務家が百家争鳴しているのですが、そうなる原因の1つとして、国税不服審判所が過去に「1か月程度」を超えた空室期間でも一時的空室であると許容して課税処分を取り消す裁決を出していることが挙げられると思います。

具体的には、高松国税不服審判所と国税不服審判所沖縄事務所において、「1か月程度」を超えた空室期間でも一時的空室であると許容した裁決を過去に出していますが、その一方、「1か月程度」の基準を厳格に適用して一時的空室ではないとして審査請求を棄却した裁決もあります。

4.一度出した裁決の判断を変えることはない

ここで、いずれの判断が誤っていると特定することは差し控えますが、本来は行政判断の全国統一性が要求される国税不服審判所裁決においても、現実的には、裁決権が本部所長により委任されている各地域審判所長の当時の判断によって、一見相互に矛盾するような裁決が併存しているという事実は否定できないと思います。

しかし、過去に出した裁決がその後の裁判例などによって結果的に誤りであったと判断される場合であっても、過去に出された裁決判断を国税不服審判所が事後的に変更するということはせず、修正後の判断プロセスによる裁決を将来的に出し続けることによって、利害関係者に「果たして過去のあの裁決は参考にして良いものか?」という疑問を持つことを静かに待っていることしかしません。

貸家建付地一時的空室のように一見矛盾するような裁決が併存しているような場合には、
・国税不服審判所裁決による判断プロセスをその後の裁判例が支持しているのか?
・いずれが国税不服審判所の公表裁決になっているのか?
といった視点で、いずれに依拠すべきかを判断した方が良いのではないかと思います。

5.2022年問題によって貸家建付地一時的空室の争訟が増加するかもしれない

2022年問題に加え、人口減少も相まって賃貸経営が更に難しい時代に突入すると想定され、税理士としては賃貸物件の評価減の該非を判断する機会も増えるのではないかと思われます。

税理士先生から「こういう審判所裁決があるから、私のケースでもこのように適用できますよね?」というご相談を承ることが多く、それは、審判所裁決に強力な規範性があると信頼していただいていることの裏返しですので、卒業生としては光栄でありますが、卒業生として審理の実際を経験した者であるからこそ、「審判所裁決だからといってすぐには飛びつけない」という意識も併せて備えながら日常の審理業務に従事しています。

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