【0045】税務官吏服務心得

1.指定官職予防講話

税務職員に限らないと思いますが、公務員は年に数回、「予防講話」という研修があります。

何を予防するのか・・・不祥事の予防です。

私が大阪国税不服審判所に奉職していた当時又はその直前に、大阪国税局所属の税務職員による非行が他局に比して頻発していたことから、大阪国税局においては国税庁派遣監察官が特に目を光らせていたように思います。

そんな折、指定官職(税務署でいう副署長以上)を対象とした管理監督者としての予防講話があり、私も大阪合同庁舎第3号館15階の大会議室で首席監察官の講話を受けていたのですが、同官が以下の「税務官吏服務心得」を解説していました。

2.税務官吏服務心得

不祥事の抑止に止まらず、税務職員が納税者を接遇するに当たってのマナー全般が格調高い文言で記載されていますので、以下にご紹介します。

税務官吏服務心得
明治29年11月主税局通牒

臣民納税の義務は、法律に依るにあらざれば之を定むるに能わず。
税務官吏は実に租税法規の執行を任とするものにして、その処弁(しょべん)の結果は直ちに臣民の休戚(きゅうせき)、政府の歳入に関す。
誠に、この職務に従うもの自らその任務の軽からざるを省み、常に慎重の注意をなし、いやしくも過誤遺漏なからんことを期せざるべからず。
ここに税務官吏服務心得の梗概(こうがい)を示し、以てその任務を完行するに就き服膺(ふくよう)すべき綱目の大要を知らしむ。

第1条
およそ、税務の執行は、法規の定むる所に遵い、課税の基礎を明らかにし、規定以外の徴収をなさず、また、規定以内において逋脱なからしむを以てその目的とす。
物件の査定、簿書の整理、不正行為の予防、犯則事件の検挙、共に皆この目的を達するの手段方法に外ならず。
税務官吏は常にこの意を体し、処理措弁全て此の目的に帰着するを期すべし。

第2条
事務の処理はもとより周到緻密なるを要すと雖も、いたずらに事を繁細(はんさい)にし人民の冗煩(じょうはん)を致し又は時間を空過(くうか)せしむるが如きことあるべからず。

第3条
人民に対するは、須(すべ)からく懇切丁寧なるべきと雖も、自ら職務の分限を守り、漫(みだ)りに民業に干渉し、又は納税者と昵狎(じっこう)すべからず。

第4条
職に当たっては、宜しく厳正にして熱心なるべし。
然れども、検束に過ぎて人民の情意を竭(けっ)さしめず、苛察(かさつ)に渉(わた)りて細故(さいこ)の摘発を事とするが如きことあるべからず。

第5条
事を執るは、当に敏活にして果断なるべし。
然れども、粗漏に流れて緻密を欠き暴慢(ぼうまん)に陥りて温和を失うべからず。

第6条
簿書の取扱は、類別を明らかにし保存を確かめ、事に当たって、索引の便を得るを勉むべし。
税務官吏は常に意をここに注ぎ、その整理を忽諸(こっしょ)に付すべからず。

第7条
税務に在りては、算数の事最もその多きを占む。而して、その正否は直ちに徴税の当否と相関係す。
故に、算数の事においては、最も心を用い違算誤謬なきを期すべし。

第8条
逋脱犯則はもとより種々の原因あるべしと雖も、また日常取締りの緊否(きんぴ)に関すること大なり。
之を事後に検挙すべきは勿論なりと雖も、最も之を未然に予防することに注意せざるべからず。

第9条
税務の取締りは形式に流れず実効あるを要す。
また、公平無私にして人に依って寛厳同じからざるが如きことあるべからず。

第10条
税務官吏は職務に服する忠実を旨とし、同僚に対しては禮譲(れいじょう)を重んじ、各自其地位に従て職分を尽し、互いに同心協力して全部の事務を挙らんことを勉むべし。

第11条
税務官吏は人民の財産に対して職務を行い又は犯則行為の検挙をなすものなれば、最も清廉純潔ならざるべからず。
故に、その素行を修め品操(ひんそう)を高くし、勤倹(きんけん)を守り、廉恥(れんち)を重んじ、いやしくも他人の指摘を受くるが如きことなきを期すべし。

第12条
税務官吏は人民の財産に関して調査をなし又は物品の製造方法を取調べることあるを以て、自ら人の機密を知得するものなりと雖も、職務上に要するのほか決して之を他人に漏洩すべからず。

第13条
税務官吏は平常注意して課税物件の状況、価格、製造方法等を考察熟知することを勉め税務執行上の参考となすを要す。

第14条
税務官吏は人民に接するには相当の礼節を守り、挙止(きょし)言語は最も温厚端正にして、自ら他の敬重を受くるの実あるを要す。

第15条
税務官吏は人民において無礼失言その他粗暴の挙動をなすに遭遇するも、決して激して憤怒し、臆して逡巡するが如き行為あるべからず。
益々静粛端厳穏に適宜の処置をなすべし。

第16条
税務官吏は執行の際、総て威儀を損し体面を傷(そこな)うが如き外観若しくは挙動あるべからず。
また、課税物件を検定するに当たりては、己む得ざる場合のほかは之が消費毀損等之なき様注意すべし。

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