【0222】口頭意見陳述の留意点(その4)

1.発問権を行使するか否かについての申立人の意思の確認

 「口頭意見陳述の申立書」において申立人が原処分庁に対する質問を発するか否かが不明の場合には、担当審判官は、申立人に対して口頭意見陳述の場における発問権の行使の趣旨を説明した上で、発問権の行使の有無及び原処分庁の出席を求めるか否かを確認することになります。

2.発問権が付与された趣旨

平成26年法改正において、口頭意見陳述の際に、申立人が原処分庁に対し、事件に関する質問を発することができることとされました
この発問権が創設された趣旨は、申立人が原処分について、その法律上及び事実上の根拠を原処分庁に対して直接質問し、その回答を受けることによって、攻撃防御の対象を明確にするということで、手続保障の機会の充実を図ることにあると解されています。
なお、平成25年6月21日総務省「行政不服審査制度の見直し方針」の「3審理手続」の「【説明】(総論)」には、「行政手続法により事前手続が整備されたことを踏まえれば、事前手続との均衡を図るとともに、より一層の公正性を確保する観点からも、弁明書の作成を義務付け、口頭意見陳述において処分庁に対する質問権を付与するなど、不服申立人等に対する手続保障の充実を図ることが適切と考えられる。」と記載されています。

3.申立人が発問権を行使する場合

口頭意見陳述の申立書に原処分庁質問書面が添付されていない場合には、担当審判官は、提出期限を定めて、原処分庁質問書面の提出を要請することになります。
なお、質問の内容によっては許可されないことがあり得ること及び原処分庁質問書面の提出がない場合には、口頭意見陳述の場で原処分庁からの回答が得られないこともあり得ることを併せて説明することになります。
ここで、担当審判官が、申立人に対して、陳述内容及び原処分庁質問書面を提出するよう求めることは、法令上要求されたものではありませんが、原処分庁が事前に申立人の陳述内容や質問内容を承知していない場合には、 口頭意見陳述の場で申立人の質問に対して回答が困難な場合が生じることが想定されるため、あらかじめ質問事項等を原処分庁に伝えておくことにより、当日に、できる限り原処分庁から回答が得られるようにするために提出を求めるものである旨を説明し、申立人の理解を得た上で、提出期限を定めて当該書面を提出するよう要請することになります。

4.申立人が発問権を行使しない場合

担当審判官は、「電話聴取書」などの内部の記録書に申立人が発問権を行使しない旨を必ず記録することになります。
申立人が発問権の行使をしないとの意思表示があった場合には、口頭意見陳述の場に原処分庁の出席を希望するかどうかの意思表示をさせ、原処分庁の出席を希望しないとの意思表示がされた場合には、原処分庁の出席を求めないことになります。
ここで、申立人に発問権の行使の意思がない場合でも、申立人が原処分庁の招集を希望する場合はもちろんのこと、申立人が原処分庁の招集を希望しない旨の意思を明らかに表示しない場合には、担当審判官は、原処分庁を招集することになります。

5.原処分庁の出席を求めない理由

国税通則法第95条の2第3項は、口頭意見陳述を実施する場合には、「全ての審理関係人」と規定しており、全ての審理関係人を招集することが実施の要件とされているが、これは、申立人に原処分庁に対する発問権が付与されたためであると解されています。
そうすると、申立人が発問権を行使しない場合には、原処分庁の出席がなくても、口頭意見陳述の実施の趣旨が損なわれることはないと認められますし、申立人が原処分庁の出席を希望せず、 原処分庁に質問する意向がない場合にも、原処分庁の出席を必要とすることは、単に有益ではないというだけではなく、申立人の意見陳述がやりにくくなる(申立人に過度の緊張をもたらすなど)という弊害が生ずることも考えられることから、担当審判官は、申立人から原処分庁の招集を希望しないなどの意思が明確に示された場合には、当該口頭意見陳述の場に、原処分庁を招集しないことになります。
なお、この点につき、総務省は「全ての審理関係人が出頭しなければ口頭意見陳述を実施できないものではない。」旨を回答しています。
ここで、申立人が原処分庁の招集を希望したものの発問権を行使しない旨の意思を表示した場合であっても、申立人が口頭意見陳述の当日までに発問権の行使を希望した場合には、担当審判官は、それが制限すべき質問でない限り、質問を許可することになります。
また、申立人が、発問権を行使せず、原処分庁の招集も希望しない旨の意思表示をしたにもかかわらず、その後になって発問権の行使を希望した場合には、それが、開催期日等の通知後である場合には、原則として応じる必要はないのですが、通知書の発送前である場合や、担当審判官がその必要性を特に認めた場合には、日程等の変更を含め、弾力的に対応することができるものとされています。

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