【0218】徴収事件の不服申立て(先行行為と後行処分との関係・処分の不当性)

1.課税処分の違法と徴収処分との関係

課税処分と滞納処分とは関連する処分ではありますが、課税処分は、抽象的に成立している納税義務を具体的に確定させるために行われるものであって、課税処分が行われた場合、納税義務者が課税処分によって確定された納税義務を履行すれば徴収処分が行われることはないことから、滞納処分が当然に予定されているわけではなく、それ自体独自の効果を目的とするものです。
そして、徴収処分は、具体的に確定した納税義務の実現を図るために行われる処分であって、必ずしも課税処分がされていることを前提とするものではありません。
したがって、課税処分と滞納処分との間には、違法性の承継は認められないと解するのが相当だと考えられます。
そうすると、請求人の主張が、課税処分が違法であるから、徴収処分も違法であると主張している場合には、国税不服審判所としては、課税処分は適法に確定していること(取り消されていないこと)、仮に課税処分に違法があったとしても、課税処分と徴収処分とは、それぞれ独立の法律効果を目的とする別個の処分であることから、前者の違法性は後者に承継されないことを説示した上で、差押処分そのものの適法又は違法について判断することになると考えられます。

2.先行する徴収処分と後行の徴収処分との関係

督促又は差押処分の違法性は、その後における差押え、換価又は配当処分に承継されることになります。
したがって、先行処分に取消原因がある場合には、後行処分自体に固有の取消原因がなくても、後行処分の取消しを求めることができます。
しかし、第二次納税義務の納付告知処分又は譲渡担保権者の物的納税責任の告知処分と第二次納税義務者又は譲渡担保財産についての滞納処分とは、それぞれ目的及び効果を異にし、それ自体で完結する別個の行政処分であることから、その納付告知処分等の違法性はその後に行われた滞納処分には承継されないとされています。
また、源泉所得税の納税告知処分と滞納処分は租税徴収手続の中の処分行為である点において目的を一にしていますが、納税告知処分は納税義務の履行を請求する行為であるのに対し、滞納処分は納税義務の履行を強制的に実現する行為であり、両者は別個の法律効果を目的とする行政処分ですから、その納税告知処分の違法性は滞納処分に承継されることはないと判断されています。

3.処分の不当性

裁判において処分を取り消すことができるのは、その処分が違法(無効)なときに限られますが、不服申立てにおいては、処分が違法なときのみならず不当なときも取り消すことができます。
殊に、徴収関係事件においては、請求人が原処分の取消しを求める理由として、当該処分の不当を主張することが散見されます。
例えば、差押処分の取消しを求める審査請求事件において、滞納国税を分納中であったにもかかわらず、無予告でされた差押処分は不当である旨の主張がされることがあります。
ここで、処分の不当とは何かが問題となります。
行政処分をするに当たっては、その権限を有する行政庁に一定の裁量権が認められている場合があります。
この場合、裁量による処分が裁量権の範囲を逸脱して行われたものと認められる場合又は裁量権の濫用と評価される場合には、当該処分は「違法」として取り消されることになります。
一方、裁量による処分に裁量権の範囲の逸脱又は裁量権の濫用があるとまではいえない(すなわち違法ではない)ものの、制度の趣旨・目的に照らし裁量権の行使が適正を欠く場合があり、このような場合はその処分は「不当」と判断されます。
したがって、審査請求において、請求人が原処分の不当を主張する場合は、その処分の不当性を審理する必要がありますが、実際に何をもって不当と判断するかは、国税不服審判所は慎重に検討しているようであり、あまり幅広く捉えることはしていないというのが経験者による印象です。
なお、処分の不当とは、上記のとおり、裁量による処分であることが前提となるから、裁量権が付与されていない行政処分にあっては、不当はあり得ないこととなります。
また、特に徴収関係処分において裁量が認められているものは、❶差押えや公売の時期についての裁量、❷差押財産の選択についての裁量、❸「納税の猶予」の要件該当性の判断などが考えられます。

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