【0033】特定任期付職員の「渡り」

1.特定任期付職員

民間出身の国税審判官は、正式名称としては「国税審判官(特定任期付職員)」であり、「特定任期付職員」という用語は「一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(任期付職員法)」の第7条が根拠となります。

大学などの教育機関において「特任研究員」「特任教授」という言い方がされますが、そういう意味では「特任審判官」であるともいえるでしょう。

任期付職員法上、特定任期付職員の任期は5年間を超えることができず、国税審判官は原則3年間の募集となっています。

ただし、「民間のキャリアから離脱する期間として3年間は長い」という意見があったようで、現在は募集時に「2年間」という選択肢もあるようですし、任期3年間で任官されても、希望によって1年間延長されるケースもあります。

最長の5年間国税審判官であった方は、私の知る限り渡邊未来子弁護士くらいしか聞きません。

この方は、国税審判官に任官される前まで、東京法務局の訟務検事として特定任期付職員の職にあった方です。

更に、この方の特筆すべきところは、民間出身の国税審判官は、通常、審判所長の補佐である法規審査担当の補職辞令が得られないのが通常であるところ、上記のキャリアから、任期の最後には東京国税不服審判所の法規審査を担う審判第一部に配属されています。

2.「渡り」とは

ところで、人事関係の俗語ともいうべき言葉に「渡り(わたり)」というものがあります。

これは、給与上の処遇を主眼として、職務や責任の実態よりも上位の職や職務の級に一律に昇任・昇格させることをいうようですが、平成21年に、当時の麻生太郎総理大臣によって、キャリア官僚が天下りを繰り返すことを抑止する取組がなされたことで脚光を浴びる言葉になりました。

税制においては、勤続年数が5年以下の国家公務員については、退職所得の2分の1課税の適用除外にするといった措置がなされました。

特定任期付職員は、任期付職員法上、任期は5年間を超えることができないため、なぜかこの規制の対象に含まれてしまいましたが、これについては過去にお話ししており、そちらの記述に譲ります。

実は、別の省庁の特定任期付職員を経験してから「国税審判官(特定任期付職員)」になるケース、また、「国税審判官(特定任期付職員)」を退官して別の省庁の特定任期付職員になるケースがしばしばみられます。

例えば、私が平成29年7月9日(日曜日のため実際には7月7日)に退官した時に、同時に退官する民間出身の国税審判官から「お世話になりました」という内容のメールが届きましたが、「今後は財務局の証券検査官(特定任期付職員)に転じる」という方が複数おられたことに驚きました。

また、令和元年7月10日に国税審判官に採用された方2名は、いずれも証券検査官を退官したばかりの方(しかも同僚)であり、2人揃って財務局から国税不服審判所に異動されたことになります(正式には、財務局を任期満了退官して退職手当を受けられて、改めて国税不服審判所に採用されたことになります)。

3.国税審判官のキャリアを活かしてほしい

上記の渡邊未来子さんも特定任期付職員の「渡り」をされていることになりますが、渡邊さんの場合は訟務系統という一貫したキャリアであるのに対して、他の特定任期付職員の「渡り」は必ずしも一貫したキャリアであるかどうかは定かではありません。

国税通則法施行令31条には国税審判官の任命資格の条文があり、その1号において、弁護士・税理士・公認会計士にも「国税に関する学識経験」があることを求めていますが、相互に関係性の薄い特定任期付職員を「渡り鳥」のように経験している方が、果たして同条でいう「国税に関する学識経験」があるだろうかという疑問がないわけではありません。

また、採用された審判官と同勤する者又はその審判官に裁かれる審査請求人に、「民間出身者を対象に任期付公務員の募集をしていて、たまたま応募して採用されたのが国税審判官であっただけで、この審判官は、任期付公務員である程度の待遇であれば他の官職でもよかったと思っているのではないか?」と思われる可能性もあります。

最近は、国家公務員においてもワークライフバランスの充実が叫ばれ、特定任期付職員に任官される前の直近の民間の職歴に比して、職務環境が恵まれているケースが多いのかもしれませんが、それだけが任期付職員を目指す目的ではなく、応募する官職の職務内容と一貫性のあるキャリアを経験して任期付公務員に任官されてほしいと思いますし、せっかく国税審判官の貴重な経験を得たのですから、その経験を出身士業の業界に還元してほしいものだと思っています。

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