【0176】民間出身国税審判官の給与

1.募集要項が公表されている

令和4年6月17日、国税不服審判所のホームページに、令和5年7月10日採用予定の「国税審判官(特定任期付職員)の募集等」が公表されました。
募集の期間は、令和4年8月1日から同年10月21日までとなっています。
国税審判官の経験が自身の今後のキャリアにつながるかどうかもさることながら、やはり待遇面が応募するかどうかの決め手になるのではないでしょうか。
今回の募集要項には、「840万円~1,000万円程度」と記載されています。
上記の募集のホームページには「Q&A」が公表されていますが、【給与について】において、
❶  給与の額に幅があるのは任地の地域手当の差である
❷  残業手当は支給されない
➌  昇給はない
➍  通勤手当が支給される
とあるだけで、これ以上に踏み込んだ記載はありません。

2.基本給

以下の解説は、今回の募集要項が公表された令和4年6月17日を基準とします。
上記で「国税審判官(特定任期付職員)」とあるように、民間出身の国税審判官は任期が3年(2年)の任期付職員となりますが、高度の専門的な知識経験等を有する者については「特定任期付職員」として、「一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(任期付職員法)」に基づき、通常の国家一般職・税務職の俸給表(給与テーブル表)とは異なる俸給表に基づいた俸給(いわゆる「基本給」)が支給されます。
特定任期付職員の俸給表は1号俸(375,000円)から7号俸(830,000円)まであり、国税審判官は4号棒(533,000円)に格付けされています。

3.賞与

民間でいう賞与は、公務では「期末手当」「勤勉手当」に当たりますが、特定任期付職員は期末手当のみ支給されます。
令和4年6月17日現在、特定任期付職員の期末手当は年3.25か月が支給されることになっています(なぜか国家一般職・税務職の支給月数よりも1か月程度少なくなっています)。
しかし、民間出身の国税審判官は10級まで存在する税務職俸給表の7級(特定任期付職員の俸給表の4号棒と同等)に位置しており、これは小規模税務署の署長級の官職に当たるため、管理職としての割増として、支給月数が15%増しされることになります。
そうすると、期末手当の支給月数は年3.25月×1.15=3.7375月になります。

4.年収

したがって、国税審判官の年収としては、533,000円×(12月+3.7375月)=8,388,087円が基数となり、これが募集要項の「840万円」と付合することになります。
しかし、これは任地によって異なる「地域手当」が支給される前の年収です。
国税不服審判所には、本部の下に12の支部(各地域審判所)と7の支所が配置されていますが、このうち、地域手当が支給されないのは熊本国税不服審判所と国税不服審判所沖縄事務所の2か所ですので、この2か所の審判所に配属された場合は、年収が840万円程度となります。
一方、地域手当がもっとも高いのは東京特別区の20%(1級地)であり、東京国税不服審判所(本所)については、8,388,087円×1.2=10,065,704円となりますので、これが募集要項の「1,000万円」と付合することになります。
ちなみに、私が在籍していた大阪国税不服審判所(本所)は16%(2級地)でした。

(補足)

令和4年8月8日に人事院勧告がなされ、基本給(俸給)の改定はなかったものの、期末手当は年3.25月から年3.3月に増額されました。
これにより、地域手当の支給されない地域(熊本・沖縄)の国税審判官の年収としては、533,000円×(12月+3.3月×1.15)=8,418,735円(+30,648円)となり、地域手当20%の東京は8,418,735円×1.2=10,102,482円(+36,778円)となります。

5.手当

特定任期付職員に支給される手当は、「通勤手当」「地域手当」「期末手当」「退職手当」の4種類しかありません。
税務職(一般職)の国家公務員(いわゆる国税プロパー職員)には、「扶養手当」「住居手当」「単身赴任手当」「俸給の特別調整額(いわゆる管理職手当)」「超過勤務手当(いわゆる残業手当)」などの諸手当が支給されますが、特定任期付職員については支給がなく、全て「俸給」込みという形になっています。
なお、任期付職員法には、特に顕著な業績を挙げたと認められる職員には、その俸給月額に相当する額を「特定任期付職員業績手当」として支給することができる旨の規定がありますが、国税審判官において支給された例は聞きません。

6.退職手当

特定任期付職員の定年退職は「任期満了」となり、その際には退職手当が支給されます。
退職手当は「基本額」と「調整額」に区分されます。
基本額は、令和4年6月17日現在、「退職日の俸給×0.837×年数」となり、国税審判官が3年(令和元年7月10日~令和4年7月9日)の任期満了を終えた場合は533,000円×0.837×3年=1,338,363円となります。
一方、調整額は管理職加算の性格があり、管理職層に属していた月数に応じて加算されるところ、上記の例では、54,150円×50%×37月(令和元年7月~令和4年7月)=1,001,775円となります。
したがって、退職手当の合計額は2,340,138円となります。
ちなみに、公務員が5年以下で退職した場合には「特定役員退職手当等」に該当するため、分離課税の退職所得の2分の1計算の適用はありません

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