【0173】歴代の大阪国税不服審判所長が選んだ在任当時の公表裁決事例(その4)


1.第21代 黒野功久さんの経歴

2020.12.15 高松地裁所長・高松簡裁判事(現職)
2020. 1. 3 高知地家裁所長・高知簡裁判事
2019. 5.13 神戸地裁部総括判事・神戸簡裁判事
2017. 4. 1 大阪高裁判事・大阪簡裁判事
2015. 4. 1 検事【大阪国税不服審判所長】
2011. 4. 1 大阪地裁部総括判事・大阪簡裁判事
2010. 4. 1 大阪地裁判事・大阪簡裁判事
2007. 4. 1 徳島地家裁部総括判事・徳島簡裁判事
2004. 4. 1 京都地裁判事・京都簡裁判事
2002. 4. 1 大阪地裁判事・大阪簡裁判事
1999. 3.25 裁判所書記官研修所教官(東京地裁判事・東京簡裁判事)
1998. 4.12 大阪地裁判事・大阪簡裁判事
1996. 4. 1 大阪簡裁判事・大阪地裁判事補
1993. 4. 1 宮崎地家裁判事補・宮崎簡裁判事
1991. 4.12 千葉地家裁松戸支部判事補・松戸簡裁判事
1990. 4. 1 千葉地家裁松戸支部判事補
1988. 4.12 大阪地裁判事補
司法修習第40期

2.黒野元所長との関わり

私の国税審判官の3年間のうちまるまる2年間所長としてご指導いただきました。
租税行政事件の他に、知財関係の事案の経験も豊富でいらっしゃいました。
運営面では、前任の瀧華元所長から引継いだ事件数が多く、同時に着任した法規審査担当審判官(裁判官)と二人三脚で矢継ぎ早に事件処理をされていた印象があります。
また、合議体の独立にも最大限配慮され、ご本人としては早期に事件処理の方向性について示唆をされることは控えられていた印象があります。
また、合議体(審判部)と法規審査担当(審理部)において事件処理の方向性について意見の相違がみられた時には、「合議と討議をはき違えないように」「裁決に至る構成員が一つの脳を構成するように」というメッセージを発出されていました。

3.黒野元所長が取り上げた裁決要旨

調査結果の説明に瑕疵があったとしても、原処分の取消事由とはならないとした事例(平27. 5.26 大裁(諸)平26-62・棄却)

請求人らは、本件相続に係る相続税の調査(本件調査)には、国税通則法(通則法)第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項に規定された事前通知及び通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定された調査結果の説明がいずれもなされていない違法があるから、原処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、まず、本件において、通則法第74条の9第1項所定の事前通知は、本件調査の担当職員の答述及びこれを裏付ける原処分関係資料によれば、当該職員によって適法になされているものと認められることから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
次に、調査の手続の違法が課税処分の取消事由となるのは、課税処分の基礎となる調査を全く欠く場合のほか、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続(証拠収集手続)に重大な違法があって調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合に限られ、他方、証拠収集手続に影響を及ぼさない他の手続の違法は課税処分の取消事由とはならないものと解されるから、証拠収集手続に違法があるとは認められない本件においては、証拠収集手続に影響を及ぼさない手続である調査結果の説明に瑕疵があったとしても、原処分の取消事由とはなり得ないものというべきである。
したがって、この点に関する請求人の主張にも理由がない。

4.黒野元所長のコメント

本件は、相続税の更正処分等に関し、調査手続の違法が争点となりましたが、そのほかにも相続により取得した土地について、財産評価基本通達24-4 《広大地の評価》に定める広大地に該当するか否かが争点となりました。
税務調査における証拠収集手続の瑕疵が課税処分の取消事由として主張されることは多いのですが、本件では、そのほかに、平成23年改正で新たに設けられた国税通則法第74条の11第2項所定の調査結果の説明の瑕疵も問題となり、改めて、調査手続が国税通則法に規定されている趣旨、租税公平主義、課税処分の基礎などに遡って検討しました。
また、広大地に当たるか否かについて、請求人らの提出資料や原処分関係資料に加え、国税不服審判所の調査により、対象土地の位置、状況、近隣地域の都市計画、利用状況などに関し具体的で詳細な事実認定を行って判断しました。

年に数回、大阪国税不服審判所長と民間出身・法曹出身の国税審判官(国税審査官)との意見交換会がありました。
その中で、黒野元所長が、「結論がどちらに転ぶかは審判所の判断ひとつといった微妙な事案で、どこまで認定事実の記載を踏み込むかは悩みどころですね。本当は裁決書に書きたい事実があっても、あまり一方的な視座に基づく事実のみを書き上げるのは『結論ありき』と読者に察知されそうなので逡巡しました。大橋さんが担当審判官をされたあの事案もね。」と言われたときは、「所長も悩みながら裁決書案のペン入れをされているのだな」と改めて思ったものでした。

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