【0122】民間出身国税審判官の或る日の日記(その17)

1.平成27年〇月〇日

始業前は、総括審判官が大規模税務署の総務課長だった当時の話になり、同姓同名の納税者の口座から2年にわたり振替納税していたことが判明したり、誤って発行した納税証明書を回収するために大阪から高松までタクシー飛ばして行ったりしたそうだ。
署では同姓同名のチェックをしないといけないようであるが、それを怠っていたらしい。

(補足)
税務署の総務課長はその名のとおり「何でも屋」ですが、ざっと挙げても以下のような業務をこなす大変な職務ですが、これに耐え抜かなければ指定官職(副署長以上)の道は拓かれません
署長秘書(日程管理)
・局からの伝達事項や局への報告事項の取りまとめ
納税者からのクレーム処理
・職員内部のトラブル
・人事評価の取りまとめ
・諸団体との関係の維持
事務視察、会計検査院、行政監査などの対応
・署内外の美化
・備品管理
人事異動対応(異動予告や辞令交付準備・異動関係者の書類の配布や回収・部門や配席の決定)
特に納税者からのクレームについては24時間以内又は72時間以内の対応・報告が徹底されており、週末に事件が勃発すると土日が潰れることもしばしばだったそうです。
更には、かつては、上記に加えて、幹部に慶弔があった場合の儀式(例えば葬儀)の取り仕切り(例えば香典管理)までしていたようで、「それ、本当に総務課長の仕事なのですか?」と聞き返したこともありました。

2.元上司から元部下への電話

審査官宛に大阪本所の総括審判官から電話があり、現在大阪本所の審判部が担当している事件の原処分当時の調査を担当したその審査官に当時の調査の状況を聞いていた。
現在はたまたま同じ審判所内のコミュニケーションではあるが、原処分庁の当時の担当者から非公式に話を聞く(話をする)のが良いのだろうかと思いながら隣で聴いていた。

(補足)
国税不服審判所は審判所専従のプロパー職員は皆無であり、執行側(国税局・税務署)の職員が異動してきて数年で帰任することになり、たまたま国税不服審判所で当時の税務署の先輩・後輩が同勤するということもあります。
その審査官は大阪国税不服審判所に赴任する直前は、大阪国税局課税部資料調査課の総括主査の職責にあり、大阪本所に係属されていた審査請求事件(大阪国税局の職員が税務調査を担当した審査請求事件の審理は大阪本所が担当することになっていました)の調査担当者でした。
また、大阪本所の総括審判官とその審査官は、かつてある税務署の「署長と総務課長」で同勤した(その審査官が総務課長として、署長であった総括審判官に仕えた)仲でした。
したがって、資料調査課による税務調査当時の納税者(審査請求人)の人となりなどについて、元直属部下であったその審査官に話を聞きたかったようでした。
ただし、事情を知っているからといって、担当審判官による調査担当職員に対する正規の職権調査の手続を経ずに、個人的に話を聞くというのもどうなのかなと思っていました。

3.審査請求書の補正

新しく担当する事件は異議申立てを経ており、届いた原処分と異議申立ての処理内容を確認する。
審査官の審査請求書の補正をさせるための原案について「最低限だけ補正させて、後に求釈明事項によって詳細に話を聞けば良いのではないか?」とコメントをして、自分は審査請求に至る経緯の作成と数字の整合などをした。
その後、副審判官が審査官に「内容を先読みしてばかりして、補正の本来の趣旨を考えていない。」という指導を受けていたが、遠まわしには自分に対しても言っているのかもしれない。
いずれにせよ、明日本人に電話してもらって、電話なり来所なりしてもらって対応してもらわなければならない。

(補正)
審査請求書が提出されると、所定の期限内の審査請求であるか否かといった形式審査が行われ、審査請求書の形式不備などがあると「補正書」を提出させることになっています。
代理人が選任されている事件でも補正はそれなりの割合で発生するものであり、これが代理人のいない本人請求事件である場合にはなおのことその発生頻度が高くなります
ただし、補正は形式審査をクリアするためのものであり、不明な主張内容については、実質審理の段階に至ってから求釈明事項を発することによって整理すれば良いものであったにもかかわらず、その審査官は、自分の所属する税目系統の事案だったからか、補正段階で主張整理までさせようとしていたのでした。

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