【0280】適法な審査請求期間か否かの検討(その2)

1.処分に係る通知を受けた日

国税通則法第77条第1項括弧書の「その受けた日」とは、社会通念上、処分に係る通知書が処分の相手方の支配領域内に入り、その内容を了知できると認められる客観的状態に置かれた次のような日をいいます。
・処分に係る通知書が郵便等により送達された場合には、当該通知書が送達すべき場所に到達した日
・処分に係る通知書が交付送達された場合には、当該通知書が受取人(使用人、同居者その他の受領補助者又は受領代理人を含む。)に交付され又は送達すべき場所に差し置かれた日

2.送達時の納税者側の事情

処分に係る通知書が前記により送達された後返還された場合にあっても、送達の効力には影響がありません。
また、処分に係る通知書が例えば書留郵便により送達される場合で、配達日に納税者が留守であったために配達員が持ち帰り、後日、納税者が当該通知書を受領したときには、受領した日が送達日になります。
なお、日本郵便株式会社内国郵便約款第88条第1項括弧書に基づく届出により処分に係る通知書が郵便局に差し留められた場合には、郵便局に差し留められたときに送達があったものとされます。
さらに、破産手続開始の決定があった場合又は更生手続開始の決定があった場合若しくは法人について民事再生手続における裁判所の管理命令が発せられた場合には、処分に係る通知書が破産管財人又は管財人に送達された日が国税通則法第77条第1項括弧書の「その受けた日」になります。
なお、破産手続開始の決定があった場合であっても破産財団に関しないものについては、処分に係る通知書が破産者に送達された日が、また、会社法第72条第4項の規定により更生会社の機関が財産の管理処分権を回復している期間中については、当該通知書が更生会社に送達された日が、それぞれ「その受けた日」になります。
稀に発生しますが、相続の開始があった場合には、処分に係る通知書が相続人又は国税通則法第13条第1項に規定する相続人の代表者に送達された日が「その受けた日」になります。
ちなみに、処分に係る通知書が公示送達された場合には、国税通則法第14条第3項の定めがあります。

3.処分に係る通知を受けた者以外の者が不服申立人である場合の処分があったことを知った日

国税通則法第77条第1項の「処分があったことを知った日」とは、処分があったことを現実に知った日をいいます。
また、諸般の事情から、処分があったことを了知したものと推認することができるときは、了知したものとされる日が「処分があったことを知った日」となります。
なお、国税徴収法第39条に規定する第二次納税義務者が、本来の納税義務者に対する課税処分について審査請求をする場合において、「処分があったことを知った日」とは、当該第二次納税義務者に納付告知処分(納付通知書の送達)がされた日をいいます。

4.処分を受けた者が審査請求前に死亡した場合の審査請求期間の起算日

処分を受けた者が死亡した日以前に相続人が当該処分のあったことを知っていた場合には、相続人が処分を受けた者の死亡を知った日の翌日となり、処分を受けた者が死亡した日後に相続人が当該処分のあったことを知った場合には、相続人が当該処分のあったことを知った日の翌日となります。

5.処分庁以外の税務署長等に審査請求書が提出された場合の審査請求書の提出日

国税通則法第88条は、処分庁を経由して審査請求書を提出することができる旨の規定があるところ、仮に処分庁以外の税務署長等に審査請求書を提出しても、処分庁以外の税務署長等に審査請求書が提出された時に審査請求がされたものとみなす旨の国税通則法令上の規定はなく、国税不服審判所本部、支部(各地域国税不服審判所)又は支所が現実に収受した日が審査請求書の提出日となります。
ただし、このことにより審査請求が審査請求期間を経過してされているような場合には、教示の誤りその他正当な理由があるかどうかを検討する必要があるでしょう。

6.総代、管財人、相続人等が存在するときの送達の効力

次に掲げる者がある場合には、それらの者への処分の通知書を送達した日が「通知のあった日」とされます。
共同してなされた再調査の請求の場合の総代
破産手続開始若しくは更生手続開始の決定があった場合又は民事再生手続における裁判所の管理命令が発せられた楊合の破産管財人又は管財人
ただし、会社更生法第72条第4項及び第5項の規定により、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権限が更生会社の機関に回復したときは、それ以降にされる審査請求においては当該更生会社、破産手続開始の決定があった場合であっても破産財団に関しないものにおいては破産者
相続開始があった場合の相続人又は相続人代表

7.審査請求期間と除斥期間との関係

処分に係る通知を受けた者の場合
処分に係る通知を受けた者が審査請求をする場合の審査請求期間は、国税通則法第77条第1項又は第2項の規定により3か月又は1か月であり、同条第3項に規定する1年の除斥期間は適用されません。
処分に係る通知を受けた者以外の者の場合
処分に係る通知を受けた者以外の者が審査請求をする場合においては、国税通則法第77条第1項の「処分があったことを知った日」の翌日から起算して3月以内であっても、同条第3項の「処分があった日」の翌日から起算して1年を経過したときは、正当の理由がない限り、不適法な審査請求となります。

8.審査請求書の提出時期

審査請求書が提出された日は、それぞれ次によります。
持参又は宅配便による提出の場合
国税不服審判所本部、支部(各地域国税不服審判所)又は支所が収受した日
郵便等による提出の場合
国税通則法第77条第4項が準用する国税通則法第22条に規定する通信日付印の日
ただし、国税徴収法第171条の規定により、公売公告から売却決定までの処分及び換価代金の配当に係る審査請求については、郵便等の場合であっても、収受した日となります。
国税通則法第88条の規定による処分庁を経由する審査請求の場合
前記❶又は❷と同じく、処分庁が収受した日又は通信日付印の日
国税電子申告・納税システムによる審査請求の場合
出力した審査請求書のヘッダ部に印字される受付日時

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