【0065】国税不服申立て制度の歴史(協議団の組織)

1.協議団の所掌事務

国税庁協議団及び国税局協議団令第1条第1号により、所得税法、法人税法、相続税法、資産再評価法又は富裕税法に規定されている審査請求に対する決定のための協議を行うこととなっていましたが、同条第2号で、「国税庁長官又は国税局長が内国税の賦課徴収に関する処分についての審査の決定に当り、特に協議に付した場合において、当該協議を行うこと」と規定し、各税法によって協議団へ当然に付議される事案以外の審査請求事案についても、協議団が協議できるようその弾力的な運用が図られていました。

なお、昭和34年に国税徴収法が全面改正されてからは、法律上も審査請求事案の全てについて協議団が協議を行うことになりました。

また、各国税局協議団には、昭和26年7月から苦情相談所が併設され、協議団は、税務職員の態度等に関する苦情処理も行い、更に、昭和36年3月には、この苦情相談所が税務相談所と改められ、税法の解決等についての相談を行うことになりました。

2.協議団の組織

協議団は、国税庁及び国税局に本部を置き、全国主要都市51か所(昭和27年には39か所となります)に支部を置いて、原則としてその分掌地域内の審査請求の処理に当たりました。

協議団の定員は、国税庁及び国税局を合わせて当初807人とされ、協議官については、経験豊かで有能な部内職員から配置換えしたほか、民間人からの採用を行うため、昭和25年5月7日に「国税調査官(協議官)採用試験」を実施して、この試験合格者のうちから約400名を採用しました。

なお、国税調査官(協議官)採用試験の受験資格は、
❶旧高等学校令又は旧専門学校令による高等専門学校卒業程度の学力を有する者
税務、財政経済又は会計経理に関する経験年数3年以上の者
満30歳以上満50歳未満の者
でした。

3.協議団による協議の方法

協議団の協議は、首席協議官の指名による3人以上の協議官をもって構成する合議体の過半数の意見 (過半数の中には合議体の長の意見が入っている必要がある)によって決定することになっていました。

協議官の行う協議は、協議に付された事案の課税が適法にされているかどうかを審理するものであり、原処分庁及び審査請求人の意見を十分に聴き、必要によっては協議官自ら実地調査を行うことになっていました。

この実地調査に当たっては質問検査権が認められていましたが、必要以上の調査又は新たな所得を発見するような調査は慎むべきであるとされていました。

協議団の発足当初は、書類不備のような事案については、協議団を通さずに国税庁長官又は国税局長が却下処分をすることができたため、審査請求に係る決定は、「棄却、全部の取消し、又は一部の取消し」の3つであったところ、昭和27年からは、通達により、審査請求書は協議団で直接受理されることになったので、それ以後、協議団の決定に「却下」が加えられました。

更に、昭和25年の協議団発足までは、審査の決定は原処分よりも不利益な決定もされていましたが、協議団が発足してからは、協議団が税の不服の救済機関であるという趣旨から、原処分を増額するような不利益な決定はしないことが明確になりました

4.執行機関に対する報告

協議団の協議が行われたときは、協議団本部長は、その事案について協議事項報告書を作成し、一件書類を添付して国税庁長官又は国税局長に報告する仕組みがありました。

報告を受けた国税庁長官又は国税局長は、原則として協議団の協議どおり審査決定をすべきことになっていたので、これと異なる決定をしようとする場合は、あらかじめ協議団本部長の意見を聴くことになっていました。

なお、協議団の意見が国税局の直税部又は調査部等いわゆる主管部の意見と異なる場合で、その意見の相違が法令の解釈等によるものであるときは、国税局から審査決定前に国税庁に上申して、その指示を受けた上、審査決定を行うこととし、法令の解釈や取扱いについて全国的に統一を図っていました。

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