【0084】裁決書はどこまでマスキングするのか

1.裁決結果の公表基準

裁決結果の公表については、昭和43年7月の税制調査会「税制簡素化についての第三次答申」を受け、昭和45年の国税不服審判所創設以来、この答申に沿って、国税不服審判所の使命の観点から、先例となるような裁決について、固有名詞を匿名にするなど、審査請求人等の秘密保持に配意しながら、裁決結果が公表事例として公表されています。

その後、平成11年4月から行われた総務省の税務行政監察における指摘を踏まえ、平成12年9月8日付国管管2-2「裁決結果の公表基準について」(事務運営指針)が発遣され、「先例となるような裁決」について、その基準の明確化を図り、

納税者の適正な申告及び納税のために有用であり、かつ、先例性のあるもの。
適正な課税・徴収の実務に資するものであり、かつ、先例性のあるもの。
❸その他、納税者の正当な権利利益の救済等の観点から審判所長が必要と認めたもの(例えば、法令又は通達の解釈や事実認定が他の事案の処理上参考となるもの、取消事案等で納税者の主張が認められた事案の処理上参考となるものなど)。

を公表対象として、裁決結果が公表されています。

ただし、審査請求人等の秘密保持に配意する必要から、

審査請求人等が特定される虞のあるもの。
❷審査請求人等の営業上の秘密が漏れる虞のあるもの。
❸その他、審査請求人等の正当な権利利益を害する虞のあるもの。

は、公表しない取扱いとなっています。

2.マスキングの例示

裁決番号・裁決年月日

情報公開等で裁決書を特定するための必要なものですので開示対象です。

審査請求人所在地・審査請求人名称等

不開示となります。
個人に関する情報は、個人情報保護法上の「特定の個人を識別できる情報(個人識別情報)」に該当しますし、法人については、その法人が課税当局から税務調査を受け、妥結できず税務争訟の状態にあることが明らかとなり、コンプライアンスが重視される社会環境にあって、その法人の信用を損なう虞があります。

原処分庁名

不開示となります。
審査請求人が局所管法人である場合には法人の規模等から特定が容易になりますし、特に地方では該当の法人が少ないことが想定されます。

原処分欄記載の年月日

原則として開示対象ですが、「平成〇年〇月〇日相続開始に係る・・・」といった個人識別情報に該当するものや、法人について報道等によって課税年分等が大々的に報道されている場合には不開示になります。

裁決書の「理由」に掲記される個人名・法人名・住所・所在地・土地関連情報

他の情報と併せて特定される可能性があるため原則不開示ですが、例外として、
・日本銀行の貸出金利である公定歩合
・ゼンリン発行の住宅地図
・日本弁護士連合会が編纂した資料
といった利害関係者の特定とは関係のないものは開示対象です。

申告金額

通常他人や競合する法人に知られたくない機微に属する情報であることから、原則として不開示となります。

業種

原則として開示対象ですが、「地域の希少業種等である場合」や「管内にはその業種の会社は審査請求人しかいないといった業種名の開示によって審査請求人が明らかになる虞がある場合」には不開示となります。

個人の一身上の情報

例えば、
・審査請求人は、長年肝臓がんを患って入院中であり、
・審査請求人は、殺人の罪で懲役3年の実刑判決を受け、服役中であるが、
・審査請求人は、窃盗の容疑で事情聴取を受けたが、
といった一身上の機微に属する情報が開示されると、プライバシーが侵害される結果となるため、原則不開示となりますが、
・審査請求人は、感冒により療養中であったが、
といった程度であれば開示対象です。

個人・法人に関する特殊な情報

例えば、
・審査請求人は、国内で有数の〇〇業者であり、
・審査請求人は、〇〇県では有名な陶芸家であり、
・審査請求人は、〇〇業界で全国トップシェアを誇る企業であり、
といった情報が開示されると、他の情報と併せて特定される虞があるため、不開示となります。

技術情報・取引条件

移転価格税制等で論点となりやすい「特許・実用新案権等に関する情報」「ロイヤリティの料率」や「未発表の論文等に関する情報」など、競合する法人等に知られたくない情報については不開示となりますが、一般的な不動産賃貸借契約の内容であれば開示対象となります。

製品名

原則として不開示となりますが、審査請求人以外も取り扱っている一般的な商品名は、業種等の関係でマスキングする場合を除き開示対象です。

判決

「審査請求人とその兄弟との間で争われた紛争は、〇〇地方裁判所平成〇年〇月〇日判決(平成〇〇(〇)第〇〇号)によって解決し、」といった判決に関する情報から審査請求人を特定することができるため不開示となります。

職務遂行に係る公務員の氏名・職名

原則として開示対象ですが、「原処分庁所属の調査担当職員であった〇〇査察官は、」といった、公にすることにより不開示情報が明らかとなったり、本件の場合は査察による調査を受けたことが明らかになることで利害関係者の信用を侵害する虞がある場合などには不開示となります。

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