【0268】国税審議会の組織(その6・終わり)

1.国税審査分科会における裁決事例の紹介

2020年に公表された「国税不服審判所の50年」を基に、過去の国税審査会又は国税審議会国税審査分科会でどのような意見申出事案又は裁決事例が紹介され、委員に内容共有されたのかについて、ご紹介します。

2.平成時代(国税審査分科会)

第1回(2001/11/19)・・・裁決事例
・給与等の収入金額をことさら過少に申告した行為は、「偽りその他不正の行為」に該当するとした裁決について
・請求人の代表者が取引先から受取った金員は、請求人が購入車両価額に上乗せして捻出したものであり代表者の役員賞与であるとした裁決について
第2回(2002/10/15)・・・裁決事例
・請求人(土木建築業)が帳簿に計上した外注費には、水増し計上及び架空取引に係るものが含まれているとし、その損金算入を認めなかった裁決について
・請求人が輸入業者・ブローカーを通じて仕入れた家具の仕入金額について、輸入業者から入手した輸入申告書の金額をもって仕入過大額を算定した原処分は誤りであると認定した裁決について
・相続した土地の価額は、借地権に係る売買実例を基に評価すべきであるとの請求人の主張を採用しなかった裁決について
・中華そば店を営む請求人が、一部の帳簿しか保存せず、帳簿に記載した売上金額も出前売上金額の30から40%を除外し、更に、麺の仕入先と共謀して仕入数量と金額を実際の取引の2分の1となるよう納品書や領収書を作成させていたもので、原処分庁は推計課税により5年間遡及して所得金額を算出し、更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした裁決について
第3回(2003/10/17)・・・裁決事例
・当初の土地売買契約を解除して買主に支払った違約金を、その後に行った当該土地の譲渡に係る所得金額の計算上、譲渡費用として控除できるかが争われた裁決について
・請求人(店舗の設計、監理、施工業)が税務調査に協力せず、事業所得の金額を帳簿等に基づいて計算できなかったとして、推計(同業者比率法)により行われた更正処分につき、原処分庁が採用した同業者の業種、規模、業態の類似性が争われた裁決について
・請求人が、A国の子会社Bの増資に当たり、中古機械装置をB社宛に輸出したことにつき、当該輸出取引は輸出承認申請書等に記載された価額による売買であるか、B社に対する現物出資であるかが争われた裁決について
・請求人が、A国に出国した(1997/12/9)後に、父BからC国の法人の株式(本件株式)を受贈した場合につき、その取得時期は出国前か、出国後かが争われた裁決について
第4回(2005/4/26)・・・裁決事例
・請求人が組合員となっている民法上の任意組合からの船舶の賃貸事業に係る損益であるとする金額が、所得税法第26条第1項に規定する不動産所得の金額の計算上、総収入金額又は必要経費に当たるか否かを争点とする裁決について
・請求人が譲渡したP市の土地が、特定の居住用財産の買換えの特例の適用がある居住用財産に該当するか否かを争点とする裁決について
第5回(2007/2/6)・・・裁決事例
・原処分庁が請求人の行った法人税の申告には収益(完成工事高)の過少計上が認められるとして増額更正処分を行ったのに対して、請求人が(更正処分の理由については争わないものの、)当初申告には他の収益(土地の受贈益)の過大計上があったとして、更正処分の一部取消し(減額)を求めた裁決について
第6回(2008/3/19)・・・裁決事例
・美容業を営む者が税務調査の際に帳簿書類を提示しなかったことから、推計課税により、平成14~16年分の所得税について更正処分等が行われたところ、推計課税で課税することのほか、寡婦控除の適用が争われた裁決について
・海外子会社から○○用器具を購入する審査請求人の取引について移転価格税制を適用し、当該取引は利益分割法により算定した独立企業間価格で行われたものとみなされるとしてされた更正処分等は適法であるとした裁決について
・金員の取得原因は死因贈与ではなく贈与によるものであるとして相続税の更正処分を全部取り消した裁決について
・請求人の勤務するA社(内国法人)が属するグループを支配するB社(外国法人)から、同グループの従業員持株制度に基づき請求人に無償でB社の株式を取得することができる権利(アワード)を付与されたことに基づいて生じる経済的利益の収入すべき時期と所得区分が争われた裁決について
第7回(2009/3/18)・・・意見申出事案
・居住用家屋の共有持分を追加取得した場合の住宅借入金等特別控除の取扱いについて
第7回(2009/3/18)・・・裁決事例
・○○教室を営む審査請求人が受講修了者に対する卒業式において供した昼食等に係る費用は、交際費等に該当しないとした裁決について
・本件相続によりF国で課された相続税のうち、相続税法第20条の2(外国税額控除)の規定により控除できるのは、F国内に所在する相続財産に対応する部分の税額のみであるとした裁決について

3.最近は裁決事例紹介がされていない

国税審査分科会は、第8回の2011/3/3以降は、分科会長の互選程度の議事しかなく、最近の国税不服審判所の事案の処理状況の報告といった議題はあったとしても、分科会の本来の所管事務であるところの「国税庁長官通達と異なる法令解釈により裁決をするとき又は他の国税に係る処分を行う際における法令解釈の重要な先例となると認められる裁決をするときに、これが審査請求人の主張を認容するものであり、かつ、国税庁長官が相当と認める場合を除き、国税庁長官と共同して諮問した事項についての審議、議決を行うこと」という国税通則法第99条の規定による意見申出(通知)事案もなければ、裁決事例の紹介もされていません
これは、国税審査分科会が実質機能していない(空洞化している)のではないかとの懸念を惹起させるものです。
国税審査分科会に上程される議案はなくても、国税不服審判所には原処分庁による不利益処分を受けた納税者が日々審査請求をしてきているのであり、どのような事案について係争になっているのかについて、分科会委員は関心を抱き、また事務方は積極的に報告すべきではないでしょうか。

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