【0067】国税不服審判所の組織(本部編)

1.国税不服審判所本部の機構

国税不服審判所は、本部・12支部・7支所の計20の拠点があり、うち本部は東京霞が関の財務省本庁舎の4階に存在します。

私も採用面接を含めて数回しか訪れたことがありませんが、財務省、国税庁等の枢要な機構が集中し、そもそも建物も古いことから、想像していたような広さはありません。

財務省本庁舎は四方に長い廊下があり、その両側に執務室・会議室等の各部屋が存在しますが、国税不服審判所も同様に、「所長室・次長室・管理室」側と「審判部」側が廊下で仕切られています。

 2.本部所長・次長・管理室

国税不服審判所長(本部所長)は、歴代裁判官が法務省から2年交替で出向してきており、現在は、東京地裁第15民事部の部総括判事であった東亜由美さん(司法修習第42期)が検事に転官の上で着任されています。

判事が検事に転官する理由は、裁判官はその立場で行政官になることができないためであり、国税不服審判所長の職を解かれると、判事として裁判所に戻ることになります(前任の脇博人さんは東京高裁第11民事部判事に就かれました)。

国税不服審判所長は国税庁の中で2番目に高い地位(指定職5号俸)にある官職ですが、上記の理由から執務室はさほど広くはなく、むしろ大阪国税不服審判所の所長室の方が広く開放的である(大阪城が良く見えるから)かもしれません。

横には本部次長室がありますが、次長は国税庁キャリア官僚の指定席であり、純粋な行政官としては次長がトップになることから、人事等の運営面の取り仕切りを行うことになります。

そして、所長・次長を守るように配席されているのが管理室(総員13名程度)であり、管理室長も国税庁キャリア官僚の指定席です。

次長は50歳台のキャリアの終盤に就くポストであるのに対して、管理室長は40歳台の国税局部長級といったところでしょうか。

管理室には、室長・室長補佐の他、総務係・会計係・管理係の機構があり、国税不服審査制度の改正対応などの業務に従事する特命担当が配置されることもあります。

3.審判部

廊下を挟んで審判部(総員17名程度)があり、支部(各地域審判所)からの事案の照会対応や審判所全体で取り組むべき事項の策定及び支援を行っています。

審判部の部長審判官も国税庁キャリア官僚の指定席ですが、ポストとしては、次長と管理室長の中間くらいでしょう。

そして、部長審判官の下に、総括審判官、審判官、副審判官、審査官が、原則として税目別の縦割りで配置されていますが、特筆すべきは、審判官の中に検事出身者が法務省から出向してきていることです。

担当税目としては「国税通則法」となっていることが多いですが、実際には、支部からの事案の照会対応は、大方がその検事出身審判官を経由しているといって差し支えなく、審判部の司令塔的な役割を果たしています。

この理由は、国税不服審判所のした判断(特に原処分を維持した判断)は、その後裁判所によって検証を受けることになり、その検証に耐え得る判断であるかを見極めるためであり、事案審理については、判事出身の本部所長と検事出身の審判官が強い影響力を発揮しているといって差し支えないでしょう。

私が国税審判官に任官されていた当時の検事出身審判官は藤谷俊之さんという方で、法務省訟務局租税訟務課長を経験され、本部審判官から東京国税不服審判所長に転じられました。

4.専門スタッフ職

国税不服審判所本部には、以上の機構の他に、行政救済分析官という専門スタッフ職が1名在籍し、国税庁キャリア官僚の指定席となっています。

専門スタッフ職とは、行政の多様化、複雑・高度化に対応するため公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、在職期間の長期化に対応する観点から複線型人事管理の導入に向けての環境整備の一環として人事院が新設したものであり、省庁ごとに「〇〇情報分析官」「〇〇政策研究官」「〇〇国際交渉官」等の官職があります。

行政救済分析官は、過去の裁決事例や国税不服審判所では原処分を維持したものの裁判所で取り消された事案などを調査研究し、その後の裁決の品質向上のために活動しています。

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