【0059】訂正裁決になる誤りの例

1.用語の遣い方

国税不服審判所の公表裁決をご一瞥いただくだけでも、「こんな文章を書く仕事をしていたら、そりゃあ文章に小うるさい奴になるだろうな」と思われていることでしょう。

例えば、裁決書で「反面調査」という用語は使用できません。

実際には使用している裁決書があるかもしれませんが、それは、決裁ラインにあった方が、審判所内部の取扱いである「裁決書起案の手引き」を読み込んでいないだけです。

こういった、業界用語(他にも「申告是認」など)は、行政文書ではつとめて使わないようにしており、「取引先等に対する調査」といった別の言葉に言い換えられます。

また、「租税特別措置法(以下「措置法」という。)・・・及び措置法施行令・・・」という表現は、一見正しそうですが、租税特別措置法と租税特別措置法施行令は別のものですので、「租税特別措置法(以下「措置法」という。)・・・及び租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という。)・・・」と修文されてしまいます。

細かいところでは、裁決書に「関係法令」が掲載されますが、「財産評価基本通達〇は、・・・旨規定している。」という表現にはなりません。

理由は、「法令は『規定』、通達以下の発遣文書は『定め』」と表現するため、「財産評価基本通達〇は、・・・旨定めている。」となります。

ちなみに、「関係法令」に通達以下の発遣文書も書くと「関係法令等」になります(通達は法令ではないからです)。

2.誤りの具体例

そんな細かい約束事があるのに、良く記載ミスが生じないものだと思われるかもしれませんが、さらっと読む限りでは目立っていないだけで、実際には生じています。

裁決書発送を担当する管理課管理係のチェックが最後の砦ですが、そこで以下のような誤りが発見されます。

中には、「それは誤りというのか?」という疑問(特に❼)を持たれるかもしれませんが、公用文としては誤りだそうです。

❶請求人の関係人の名前(誤)〇男→(正)〇雄
❷別表の数字誤り(誤)6,554,720円→(正)6,544,720円
❸定義付けされていない用語(いきなり「本件〇〇」が出てくる)
❹(誤)課税標準額(100円未満切捨て)→(正)課税標準額(1,000円未満切捨て)
❺(誤)第〇条〇項→(正)第〇条〇項
❻(誤)損金に計上→(正)損金の額に算入
❼(誤)貰う→(正)もらう

❼については、むやみに漢字が使えないだけかと思いきや、逆に「(誤)言いがたい→(正)言い難い」「(誤)あくまでも→(正)飽くまでも」というのがあり、もう訳がわかりません。

3.誤りはどのタイミングで起こるか

これらの誤りがそのまま外に出てしまった場合、❶❷❸は確実に「訂正裁決」を出さなければならず、本部マターになってしまいます(全国で年に2~3件はあります)。

❹~❼は、後日、裁決事例を調べているときなどに見つかるのですが、「今更しょうがない」という結論になることが多いです。

上記のような誤りは、担当審判官が裁決書案(議決書)を法規審査部門に回付した後の同部門による修正のタイミングで生ずることが多いです。

複数の者のチェックを経由するというのは一義的には良いことですが、いろんな者が捏ね繰り回した結果、たとえば❸のような誤りが生じてしまうということが起こりえます。

こういったミスができるだけ生じないようにするためのシステム上の工夫はされており、それについては、機会があればご案内することにします。

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