【0022】国税審判官は国税の裁判官?

1. 国税審判官をどう説明するか

国税審判官の現役当時、審査請求人に対する面談や第三者に対する職権調査の機会において、冒頭に国税不服審判所の機能などについて説明をする機会があるのですが、自身の官職である「国税審判官」をどう説明するかについては常に思案していました。

国税審判官は「国税の裁判官」というのは、「正」「否」の二者択一しかなければ「否」と言わざるを得ません。

「裁判官」という官職は、司法試験合格者から選抜されて、裁判所という司法権を行使する機関において、自らの名前で判決を出す立場であり、行政組織の1構成員たる「審判官」とはそのレベルを含めて大きく異なるものです。

例えば、裁決書は国税不服審判所長(本部所長)名で出されるものであり、国税審判官(担当審判官)名で出す文書は、「反論書提出依頼」「回答依頼」といったその審理のプロセスに必要な書面に止まりますが、これは、裁決権が担当審判官ではなく国税不服審判所長(実際には委任規定により各地域審判所長)にあることを顕しています。

ただし、ご説明がなかなか通じない(落ち着いて聞いていただけそうにない)方に対しては「私は国税の裁判官なんです!」という超意訳で済ませることもありました。

2.議決に基づく裁決

国税通則法98条4項に以下のような規定があります。

「国税不服審判所長は、裁決をする場合(略)には、担当審判官及び参加審判官の議決に基づいてこれをしなければならない。」

この条文だけを読むと、裁決権者は国税不服審判所長であるとしても、実質的な裁決権は担当審判官及び参加審判官(特に担当審判官)にあるのだろうという印象を抱かれるでしょうが、実際にはそうではありません。

「に基づき」とは、「・・・を根拠とする」「・・・を基礎とする」という意味であり、その基礎があれば良いものであって、「・・・のとおりに」という意味付けまでは含まれません。

「・・・のとおりに」という意味を持たせる場合には、「により」という文言となります。

そうすると、「議決に基づいて」といっても、審判所長は議決内容の拘束を受けるものではありません。

しかし、担当審判官等の議決内容が「全部取消し(納税者勝ち)」であるのに、審判所長が「棄却(納税者負け)」というのは「に基づき」とはいえませんので、こういった裁決書の「主文」は整合している必要があります。

裏を返せば、裁決書の「主文」以外の部分(「理由」部分)についてはいかようにも修正する(差し替える)ことができます。

審判所長自らがペンを入れることもありますが、通常は審判所長の補佐機関である「法規審査部門」の国税(副)審判官・国税審査官が担います。

3.司法試験に合格していない者が審判官に任官されること

国税通則法施行令31条に国税審判官の資格に関する規定があります。

一 弁護士、税理士、公認会計士、大学の教授若しくは准教授、裁判官又は検察官の職にあつた経歴を有する者で、国税に関する学識経験を有するもの
二 (略)税務職俸給表による六級(略)以上の国家公務員であって、国税に関する事務に従事した経歴を有する者
三 その他国税庁長官が国税に関し前二号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認める者

税理士(公認会計士)が国税審判官に任命される可能性は法令上存在していたものの、従前は第2号の国税職員からの任官が殆どであり、換言すれば、国税審判官というポストは、国税職員の出世双六のマスの一部でした。

これが、平成22・23年度の税制改正大綱を契機に、弁護士・税理士・公認会計士の民間専門家を制度として一定数採用する仕組みが導入され、私もその機会を得て任官されるに至りましたが、司法試験の勉強の経験もない私が国税庁審理専門機関の判断権者を経験したことは、税理士(公認会計士)のキャリア形成にとって枢要な経験になったと実感しています。

税務判断なら当事務所へ
お気軽にお問い合わせください