【0178】裁決の拘束力

1.拘束力の意義

裁決は、審査請求人及び参加人を拘束する効力を有するだけでなく、広く関係行政庁を拘束します。
したがって、関係行政庁は裁決の内容を実現するよう義務づけられていますので、裁決において原処分の取消し又は変更があった場合には、同一の事情の下でその裁決が違法又は不当であるとした同一の理由若しくは資料に基づいて、同一人に対し同一の行為をすることはできません。

2.拘束力の及ぶ範囲・・・関係行政庁

拘束力の及ぶ範囲の第1は関係行政庁であり、関係行政庁とは、処分庁及びそれと一連の上下関係にある行政庁並びに当該処分に関係を持った行政庁をいいます。
したがって、例えば、原処分があった後に所轄税務署長を異にする納税地の異動があった場合における異動後の納税地を所轄する税務署長のほか、登記機関の登録免許税の課税標準及び税額の認定通知に係る審査請求にあっては、当該審査請求人の住所地を所轄する税務署長、滞納処分の引継ぎを受けた税務署長の処分に係る審査請求についての裁決にあっては、当該処分の引継ぎをした税務署長がこれに該当します。

3.拘束力の及ぶ範囲・・・主文及び理由

拘束力の及ぶ範囲の第2は、拘束力は取消し又は変更の裁決の実効性を保障するために認められる効力ですので、その効力は、裁決の主文及び主文と不可分一体をなす理由について生じます。
したがって、裁決の主文と直接関係のない傍論や間接事実の判断には及ばないとされています。
原処分が裁決によって取り消され、又は変更された場合においては、関係行政庁は当該裁決の理由に示された国税不服審判所長の判断を尊重しなければならないことから、例えば、原処分庁は、更正処分の取消しの裁決があった後に当該裁決で排斥された理由と同じ理由で再更正処分をすることはできません。

4.棄却・却下

このように、拘束力は、原処分を取り消し、又は変更する裁決について機能するものですから、棄却及び却下の裁決については生じないとされています。
却下の裁決は、原処分の当否について判断したものではなく、また、棄却の裁決は、原処分が違法又は不当でないことを判断したにとどまるため、いずれも関係行政庁を拘束するいわれはないとされています。

5.別個の理由

拘束力は、裁決の主文と一体となる理由について生ずるものですから、裁決で排斥された原処分の根拠以外の別個の理由があるときは、原処分庁は、当該裁決にかかわらず、当該別個の理由に基づいて再更正処分をすることができるとされています。
したがって、却下又は棄却の裁決があった後はもちろん、一部取消しの裁決で維持された部分についても、後日、税務署長が減額の再更正をする妨げとはなりませんし、新たな所得の漏れが判明した場合には、増額の再更正処分を行うこともできるとされています。
また、行政処分の審査請求手続と行政処分の取消訴訟手続とは全く別個の手続ですから、審査裁決を経た後の訴訟において、受訴裁判所が審査裁決の認定をそのまま是認しなければならないわけではなく、裁決の拘束力は及ばないとされています。

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