【0209】国税審判官採用試験の実際(その2)

1.「5 面接 ⑴ 面接の流れ」

【0208】に引き続き、「弁護士山中理司のブログ(https://yamanaka-bengoshi.jp/)」に山中先生が行政文書の開示請求をされて入手された「国税審判官(特定任期付職員)の面接試験実施要領(平成30年1月10日)」を基に、面接試験の実際について記載します。

国税審判官(特定任期付職員)の面接試験実施要領

場所は国税不服審判所4階の大会議室で行われ、控室から管理室長補佐の誘導を受けて入室します。
面接対象者ごとに主担当試験官と副担当試験官が指名され、両者によって主に質問され、最後に他の面接官による補足質問がなければ終了という流れになります。

2.「5 面接 ⑵ 評価」

私が最初に受験した際は、私が税理士試験と公認会計士第二次試験の双方に合格していて、採用されて当然といった雰囲気が態度や言葉として発露していたのか、当時の面接官(おそらく主担当面接官)であった大阪国税不服審判所長の西川知一郎さん(令和4年9月8日より大阪家裁所長)に「あなたは国民全体の奉仕者になるというよりも、自らのキャリアアップのために応募したんではないですかね?」と最後に言われてしまいました。
確かに、それまで裁決書研究もまともにしたことのなかった者が「もっと読まれ、活用されるには裁決書をどのようにすれば良いとお考えですか?」といった質問に満足に回答できるはずもなかったのです。
また、2回目に受験した際は、当時の面接官(おそらく主担当面接官)であった大阪国税不服審判所長の瀧華聡之さん(令和3年6月1日をもって大津地家裁所長を定年退官)に(それまでの私の回答が頓珍漢だったからでしょう)あなたは、『求釈明』という意味を理解されていますか?」と言われて、国語辞典の字義のとおりのことしか言えませんでした。
マスキングされている「個別面接票」の各評価項目がどのようなものだったかはわかりませんが、少なくとも法律素養に関しては最低点が付されていても致し方なかったのだろうと思います。
しかし、採用されてから、先輩である民間出身の国税審判官や採用関係者の方にそれとなくお聞きすると、以下のようなコメントを返してくださいました。

・面接試験に残っているだけで競争倍率は2倍になっている。
・法律素養についてはあるに越したことはないが、弁護士と税理士・公認会計士は求められている素養が異なるので、決定的な差にはならない。
・一人で完結できる職務ではなく、むしろ協調性の有無を面接で測ろうとしている

最初は不採用で、2回目に採用されたのは、「国民全体の奉仕者となる」ことを意識した受け答えをしたからかも知れません・・・。

3.「評価の際に留意すべきこと」

公正な態度で評価を行うべきことは当然のこととしても、面接試験官と立会人が法曹とキャリア官僚しかいないことと国税不服審判所の機能(国税審判官に求められる役割)に照らせば、どうしても弁護士が有利で税理士・公認会計士が不利にならざるを得ないのかもしれません。
実施要領では、「個人的好悪による誤差」「自己対比誤差」「中心化傾向・寛大化傾向・厳格化傾向」「ハロー効果」「先入観による誤差」による評価の偏りについて留意するように指示しており、面接試験官も一応はこれらに留意して面接に臨もうとはしていたのだなと思いました。

4.税法を知っているというだけでは遂行できない

私は、任官前は、「国税に関する官職であり、これまで国税職員が殆どを占めていたポストなのだから、むしろ弁護士よりも税理士の方が即戦力になるのではないか」という誤解に基づき、弁護士の採用が多い状況に疑問を持っていて、前出の瀧華聡之さんに対して、所長室の1対1の面談の際に直接質問したこともありました。
しかし、実際に経験をすることで、国税審判官はひと通り税法を知っているというだけでは満足に遂行できない職務であることがよくわかりました。
国税不服審判所は、国税職員、法曹出身者、会計資格出身者によって成り立つ多民族国家であり、それぞれがそれぞれの分野の知見を基に知恵を出し合って、審査請求事案の解決・処理を図らなければならないのだろうと思います。

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