【0079】国税職員の永年勤続表彰に見る審判所の位置付け

1.永年勤続表彰

10月は国税職員の永年勤続表彰の季節です。

終身雇用(身分保障)が維持されているため、同期の大方が勤続20年・30年(高卒相当で入職している者については40年)という節目を迎えるのですが、これら職員は外部会場で国税庁長官や国税局長から表彰を受けることになっています。

過去については、盛大にホテルの祝賀会に夫婦同伴で招待され、局長などにお酌をしてもらっていたそうですが、現在は予算が削減され、そのような催しはないと聞きます。 

また、表彰の時期が近づくと、国税不服審判所職員で今年節目を迎える職員が回覧され、その者については長期休暇が積極的に取得できるよう部内で配慮するようにといった取り組みがなされますが、私はその回覧を見ては「女性の年齢も丸わかりでありプライバシーなんてあったものではないな」と思っていたものです。

この長期休暇については、単に年次(有給)休暇の取得促進に止まらず、財務省共済組合から対象者には旅行券クーポンが贈呈され(当時は4万円だったと記憶しています)、「それで旅行にでも行ってください」という気持ちが込められていますが、過去に出張旅費に流用して実質的に換金した者がいたらしく、クーポンの「出張旅費には利用できません」という一文に失笑したことがあります。

2.表彰式でのエピソード

国税不服審判所で同勤していた国税職員の方が勤続20年を迎え表彰を受けた時の話です。

国税庁の組織は、大きくは、国税局(税務署)・国税不服審判所・税務大学校に区分されますが、当時国税不服審判所所属の職員で勤続20年(審判所のみに20年勤続していたのではありません)の対象者が2名しかおらず、もう1人の方が壇上に上がり、その方はその場で起立することになっていたそうです。

しかし、その方が起立のタイミングを逸してしまったところ、周りの国税局(税務署)所属の同期から、「お前、国税不服審判所に異動になったからといって拗ねるなよ。」と言われてしまったそうです。

国税不服審判所の定員は、国税庁定員全体の1%に満たず、ほとんどは国税不服審判所の経験を経ずに定年まで迎えるのですが、国税不服審判所を経験していない国税職員から見た国税不服審判所の位置付けの実際はこんなところです。

他の国税職員の方のお話を聞いても、国税不服審判所への異動が予告されると「出世コースから外れた」「俺、何か悪いことをしたかな」と思う方が少なくないようです。

3.「国税職員VS民間出身」の構図ではない

3年間外様で国税組織を経験しただけの私には、その理由が明確にわかりませんが、国税不服審判所には国税局(税務署)所属の職員が課税した処分を取り消す権能があり、「せっかく自分たちが苦労して処分したのに国税不服審判所に取り消された」という周りの職員の愚痴がにわかに拡散しているからかもしれません。

しかも、最近は、私のような外部登用の国税審判官もいるということで、更に国税不服審判所に対する警戒感を持たれているようなことも仄聞します。

しかし、実際に国税不服審判所を経験された国税職員の方は、総じて「外部登用の国税審判官が必ずしも自分達の敵ではなく、公平に判断している」ことを理解していただいていると感じますし、国税不服審判所に異動になった方が、その後国税局(税務署)に帰任した後も、そのようなイメージを周りの職員に拡散してほしいと思っています。

一方で、私も、国税審判官になる前は、「国税不服審判所は、国税局(税務署)出身者が原処分維持を主張することによって自分と意見が対立するのだろうか」と心配していたのですが、それが杞憂でしたのでお互い様なのかもしれませんし、「国税局(税務署)出身の国税審判官が必ずしも自分達の敵ではなく、公平に判断している」ことを税理士業界の方に知っていただけるように活動していかなければと思っています。

 

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