【0049】国税不服審判所の4月異動

1.人事異動は1年に2回ある

国税不服審判所も国税庁の機関ですので、7月10日の定期人事異動の影響を色濃く受けますが、それは、どちらかというと現場レベル(審査請求人と直接対応する国税審判官以下)の人事異動が中心です。

しかし、国税不服審判所は、以下の影響によって、7月異動ほどの規模ではないにせよ、4月異動の影響も受けることになります。

・相対的に指定官職の割合が多く、霞が関の国税庁の人事(特にキャリア官僚の人事)の玉突き影響を受けることが多い。
法務省から出向している裁判官・検察官(・書記官)の異動の影響を受けやすい。
・国税局や税務署は定年が7月9日まで延長されるのが通例ですが、国税不服審判所は定年延長の制度がないため、定年の税務職員は3月31日で退官する。

例えば、国税不服審判所本部所長は、歴代法務省から裁判官が2年交代で離着任され、令和2年4月1日付けの人事異動によって、脇博人さんが東京高裁判事に転じられ、東京地裁第15民事部部総括判事でいらした東亜由美さんが着任されています。

2.4月異動の特徴

私が退官する直前の平成29年4月の国税不服審判所関係の人事異動は、本部は管理室長(キャリア官僚)のみでしたが、仙台・大阪・広島・高松・熊本・沖縄の各審判所で首席審判官(審判所長)が交代し、関東信越・東京・名古屋・大阪で法規審査担当の裁判官・検察官が交代しました。

4月異動の特徴は、裁決までの決裁ラインの中枢にいる方に異動があるということです。

各地域審判所の規模は130名程度の東京から7名の沖縄まで大小まちまちですが、本部所長から裁決権が委任されている首席審判官(審判所長)は、いずれの審判所も1名しかいません。

それは、大規模の審判所でも、裁決書案の決裁(裁決)の局面に近づくに連れて、決裁ラインが最終的には1本になることを意味します。

すなわち、決裁までの渋滞が起こりやすい環境下で、かつ、その決裁ラインにいる方に異動があると、それによって長いケースでは数週間決裁が止まる可能性があります。

3.バスに乗り遅れる

私が在籍していた大阪国税不服審判所は2年ごとに所長(裁判官)と法規審査担当の審判官(裁判官)が揃って異動になりますが、前任の所長の最後の事案の決裁が3月20日頃で、後任の所長の最初の事案の決裁が4月20日頃になっていました。

前任の所長も後任の所長も離着任の挨拶回りがありますし、特に後任の所長は、現在係属している事案の概要の把握などがありますので、それによって決裁の空白時期が1か月程度生じていました。

なお、大阪国税不服審判所の新所長の最初の決裁対象事案は、徴収関係事案とするのが通例でしたが、これは、国税徴収法が手続法であることから、課税事件よりも裁判官にとって取っ付きやすいという法規審査の配慮によるものです。

このように、1か月間にわたり裁決の空白があることや、複雑な事案を着任後すぐに新所長に判断させるのは酷ではないかなどの考慮から、「どの事案を現所長下で処理するか」の選別が4月異動の数か月前から法規審査を中心になされていました。

国税不服審判所には、「1年以内処理割合95パーセント以上」という業績目標がありますので、審査請求後1年間までの猶予期間も睨みながら、「この事案までは現所長・この事案からは新所長」という選別がなされていました。

そうすると、前者については「現所長の決裁までに間に合わせないと!」というプレッシャーが担当審判官に圧し掛かる一方、後者については「バスに乗り遅れた」感が漂い、結果的に審査請求人を待たせる状態になっていたものでした。

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