【0131】審判所の典型的な法令解釈(重加算税・過少申告加算税・延滞税)

1.附帯税の取消しに関する審査請求

審査請求書を拝読して、所得税や法人税といった本税の増差は致しかたないとしても、附帯税の賦課は承服しがたい」という主張をよく見かけます。

「当初申告の時点では判明しようがなかった」「隠す意図などなかった」といった主張によるものですが、こういった各種附帯税の賦課要件について、国税不服審判所はどのような法令解釈を裁決書において記載しているのでしょうか。

2.重加算税の行為の主張に対する法令解釈の例

「国税通則法第68条第1項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をすることについて隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な課税の実現を確保しようとするものである。

したがって、重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。

しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当ではなく、納税者が、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、課税要件事実を隠ぺい、仮装したところに基づく過少申告と認めることができるものと解される。」

3.過少申告加算税を課さない「正当な理由」の主張に対する法令解釈の例

「過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対し課されるものであり、これによって、当初から適法に申告した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。

そして、このような過少申告加算税の趣旨に照らせば、国税通則法第65条第4項にいう『正当な理由があると認められる』場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。

したがって、法の不知や納税者の主観的な事情に基づく単なる法令解釈の誤りなどは、正当な理由には当たらないものというべきである。」

4.「延滞税のお知らせ」取消しの主張に対する法令解釈の例

「延滞税は、国税通則法第15条第3項第6号及び同法第60条の規定により、所定の要件を充足することによって法律上当然に納税義務が成立し、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定するものであって、同法第75条第1項に規定する国税に関する法律に基づく処分によって確定するものではないし、延滞税のお知らせは、法律上成立している延滞税について、その納税義務が存する旨の通知にすぎず、同項に規定する国税に関する法律に基づく処分にもあたらない。

したがって、本件審査請求は、国税通則法第75条第1項に規定する国税に関する法律に基づく処分が存在しないのであるから、不適法なものである。」

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