【0041】確定申告時期の審判所風景

1.審理の進行が滞りがちになる

税理士先生・公認会計士先生におかれましては、時期的に確定申告繁忙期の真っただ中ではないかと存じます。

 私が国税審判官であった3年間は、常勤の国家公務員として、税理士法43条後段による業務停止中でしたので、少なくとも、確定申告の気忙しさとは無縁でした。

 しかし、審査請求人の代理人である税理士先生が繁忙期ですので、反論書の提出や請求人面談のお約束をしようとしても、「3月15日まで待ってほしい」と言われるケースが多くありました。

 また、審査請求人が個人である場合、原処分をした税務署の個人課税部門も大わらわの忙しさであり、意見書の提出や、原処分調査関係資料について担当審判官による職権調査の受け入れを要請しても、同じように「3月15日まで待ってほしい」と言われることがありました。

 そういった事情で、確定申告繁忙期は、むしろ国税不服審判所の審理が滞りがちでした。

2.確定申告時期の出来事

そんな中、ある審判官から「大橋さん、東大寺の修二会のお松明を見に行きませんか?審判官の任期が満了したら、確定申告繁忙期で、もう直接見ることができないかもしれませんよ。」と言われ、当時の部長審判官が高松国税局からの出向者だったということもあり、数名が半日有給休暇を取得して、クライマックスの3月12日のお松明見物をするために出掛け、現地で3時間以上並び、お松明を見て帰ってきました。

また、別の事務年度には、(上記の方ではない)部長審判官が、「民間出身の国税審判官に税務行政の現状を見てもらおうではないか」と発案し、「部長審判官の確定申告事務視察の随行」という形で、当時の審判部の民間出身審判官3名が、しかも2月29日という繁忙極まる日に、大阪局管内の(確定申告書提出枚数が管内1、2の)大規模税務署にお伺いしたことがあります。

署長室で、個人課税担当の副署長から当該税務署の申告状況の説明を受け、隣接の申告会場の殺気立った風景の中、居場所を探しながら歩きつつ説明を受けました。

国税局から受けられる応援もスズメの涙程度しかなく、限られた人数の中で、例えば、個人課税部門の中でインフルエンザの「パンデミック」が起こると配置体制が崩壊する(特に外部会場がある場合)現状や、e-Taxの機器の設営・撤収の苦労などについてお話をいただきました。

しかし、その日に伺った3名の審判官うちの2名は弁護士であり、「へ~」「ほ~」と物珍しく聞いていましたが、税務支援に何回も従事させられている私にとっては、いくら裏側の事情の説明を受けたとしても、所詮はいつもの税務支援の風景とほとんど変わりがありませんでした。

それでも、担当副署長、総務課長、個人課税第1部門統括官の危機感はひしひしと伝わってきましたし、個人課税の場合は、増額更正の期限も3月15日に到来しますので、それ以後、所得税(や個人消費税)事案の内部決裁書類である「更正決定決議書」を担当審判官の職権調査で拝見するたび、「みんな発狂しながら起案していたのだろう。よく送達ミスが起きないものだ。」と思うようになりました。

3.審理が進行する時期

このように、1事務年度の間には、原処分庁や代理人の都合によって審判所の審理が滞りがちの時期があります。

かくいう国税不服審判所固有の事情においても、人事異動の前後で事実上の審理がストップすることになります。

特に、国税組織の中で幹部(指定職・指定官職)の割合が相対的に多い国税不服審判所は、7月10日の定期異動のみならず、財務省・法務省・国税庁本庁による4月1日異動の影響も受けることがあります。

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