【0016】書くことを厭わなくなった

1.税務に関する文章を書く訓練の場

国税不服審判所を経験して、「書くことを厭わなくなった」と感じています。

審査請求書に対するお答えは、裁決書という書面の中でしかできませんので、「いかに文章で説明し切るか」という意識で書いていましたが、今から思えば絶好の「税務に関する文章を書く訓練の場」だったと思います。

私が、国税不服審判所に採用されるに当たり、唯一自信があると思っていたのは「書く能力がある」と思っていたことでした。

国税不服審判所にされる前は監査法人にいましたが、「監査報告書」は定型文でオリジナリティの余地はなくても、「マネジメントレター(監査遂行上発見した経営管理上の改善点を記載した書面)」などの文書では、少なくとも文章力に関する指摘を受けたことが全くなかったので、そう過信していたのです。

しかし、国税不服審判所に勤務して、その自信が瓦解してしまいました。

2.文章力が行政文書の水準に至っていない

裁決書は、広い意味では「民事判決」ですので、判決書を起案するに当たってのお作法(特殊技能)を習得しなければならないという側面はありますが、それ以前の問題として、要旨「文章力が行政文書の水準に至っていない」ことを「やんわりと」言われるのです。

「やんわりと」であるのは、心の中でどう思っているかは措くとして、専門能力があると国税不服審判所本部に評価されて(国税不服審判所本部所長が自ら面接試験に臨んで採用して)民間から来ている人に対して、面罵するような指摘をしてはいけないという「大人の対応」が執られているからだと思います。

しかも、部下に当たる国税審査官のみならず、同僚の国税(副)審判官、更には、上司である大阪国税不服審判所長や部長審判官にまで同じように気を遣わせていることを申し訳なく思っていました。

3.外部に出すに耐え得る文章を書く

例えば、私の書いた裁決書案のある部分を参加審判官や弁護士出身の国税審判官に確認してもらったときに、一様に「う~ん」と唸ったままの状態になり、弁護士出身の国税審判官が「ちょっと時間をもらっていいですか?」と自席に戻りました。

彼はカタカタと15分くらい作業をして、3分の2くらいに圧縮された文章を「こんなんでどうでしょう?」と配付してみんなが一読した途端、「そうそう!そういうこと!それが言いたかったんですよね!」と言って笑顔が戻りましたが、私は複雑な気持ちでした。

税理士・公認会計士出身の国税審判官は、
・どこまで証拠力のある証拠を集めればこの事実が認定できるか
・本件に射程が合った判例が見つけられるか
・負けさせる側の主張の排斥が十分か

といったリーガル面の能力不足を痛感するのですが、それだけではなく、外部に出すに耐え得る文章を書く面でも(少なくとも弁護士出身者よりも)苦労していると思います。

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