【0182】合意によるみなす審査請求

1.再調査の請求を審査請求とみなす規定

国税通則法には、第89条に「合意によるみなす審査請求」の規定が設けられています。
処分をした税務署長、国税局長又は税関長に対して、審査請求の前段階である「再調査の請求(かつての異議申立て)」がされた場合が、合意によるみなす審査請求の適用要件の1つです。
その再調査の請求が手続要件を充足し適法なものであるか否かは問われませんが、不適法な再調査の請求について審査請求とみなしたとしても、そのみなされたことにより、不適法な不服申立手続が審査請求として適法視されることにはならないため、通常は、合意によるみなす審査請求の手続に入る前段階において、当該再調査の請求が手続的に適法か否かの形式審査が行われます。

2.具体例

再調査の請求を審査請求として取り扱うことを適当と認める場合の再調査の請求には、例えば、「青色申告法人に係るいわゆる社外流出が賞与と認定されたことに伴う法人税の更正処分」と、「当該役員給与等に対する源泉徴収所得税の納税告知処分」とが同時に行われた場合のように、基本的な事実関係又は証拠関係を同一にする複数の処分について、複数の不服申立ての一方が審査請求であり、他方は再調査の請求である場合の当該再調査の請求がこれに該当します。
このような場合には、不服申立ての対象となる争点は、通常は「社外流出を役員賞与と認定し得るか否か」に設定されるでしょう。
この点は、正に法人税の更正処分の適否に直接関係すると同時に、源泉徴収所得税の納税告知処分の適否を判断する上でも不可欠の事柄でもあることから、双方の処分の適否を同時に調査、審理し判断をするのが能率的であって、不服申立人及び不服審理庁の双方にとっても便宜であるばかりでなく、その判断において矛盾を防止することができる点にメリットを見出すことができます。

3.合意を要する

再調査審理庁が当該再調査の請求を審査請求として取り扱うことを適当と認めた場合において、当該再調査の請求人がそれに同意することが適用要件とされています。
再調査の請求の一方の当事者である再調査の請求人が、当該事件を審査請求とすることについて同意せず、なお再調査審理庁の判断を求める意思を表明した場合には、この制度の趣旨の1つが当事者の便宜性にあるところからすると、再調査審理庁は再調査の請求人の意思に沿い、再調査決定によりその判断示すことが要請されます。

4.再調査審理庁及び再調査の請求人の措置

国税局長、税務署長又は税関長たる再調査審理庁は、再調査の請求を審査請求として取り扱うことを適当と認める場合には、その旨を書面で再調査の請求人に通知します。
このときの同意を求める時期には何等の制限はないことから、いつでもすることができるとされています。
再調査の請求人は、前述の通知に対して、同意・不同意のいずれかを書面で回答することになりますが、回答の時期についても格別の制限はないとされています。
再調査の請求を審査請求として取り扱うことが適当である旨の再調査審理庁の通知に対し、再調査の請求人がこれに同意したときは、その同意があった日をもって国税不服審判所長に対して審査請求がされたものとみなす効果が生じます。
また、再調査の請求人が同意した日をもって審査請求がされたものとみなされる結果、その後3か月以内に当該請求について裁決がないときは、裁決を経ないで裁判所に対し直ちに原処分取消訴訟を提起することができるようになります。

 

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