【0202】国税不服審判所内部の事件配付方針(その2)



1.審査請求事件の税目別による配付方針

主に大阪国税不服審判所を対象として各担当審判官(及び参加審判官を含む合議体)に対する審査請求事件の配付方針を解説しており、【0201】(その1)においては、処分権者である国税局長・税務署長による管轄の違いについて解説しました。
国税組織は主に、所得、法人、資産、徴収の各系統が存在しますが、審査請求事件の配付についても、不利益処分された税目によって配付される審判部が異なることがあります。
例えば、東京国税不服審判所は、審判第一部が法規審査を担当しますので、請求人面談や職権調査を行うのは審判第二部、審判第三部、審判第四部、そして、横浜支所ということになります。
このうち、横浜支所は、神奈川県の18の税務署の署長による(徴収系統を除く)不利益処分に対する審査請求が管轄になります。
そうすると、東京本所(審判第二部、審判第三部及び審判第四部)は東京都、千葉県及び山梨県の計66の税務署の署長による不利益処分、神奈川県の18の税務署の署長の徴収系統による不利益処分、そして、東京国税局長による全管の不利益処分に対する審査請求が管轄になります。
このうち、審判第二部は資産評価を含む主に資産系統、審判第三部は主に徴収系統、そして、審判第四部は主に法人系統の審査請求事件を扱うことになっているようです。

2.大阪国税不服審判所の場合

私が在籍していた大阪国税不服審判所の場合、京都支所は及び神戸支所については、場所的な管轄区域に属する税務署長による処分であれば、原則として、税目別の系統にかかわらず当該支所が担当することになります。
これに対して、大阪本所(第一部及び第二部)については、各審査請求事件を所得、法人、資産、徴収の各系統別に分類し、それぞれに、第一部、第二部に交互に配付する方式を採用しています。
しかし、例外がいくつかあります。
例えば、国際課税事件、具体的には、外国税額控除、非居住者・外国法人の納税義務・源泉課税、移転価格、国外関連者寄附金、過小資本、特定外国子会社等の留保金課税及びその他外国の法制度・商習慣による特殊な取引の課税関係などに係る不利益処分の審査請求事件については、優先して第一部(第2部門)に配付して、当該部門には国際課税の経験を有する担当者を配置して調査審理をさせています。
また、国税局査察部が関与する事件については、主に第一部(第1部門)に配付されることになっています。

3.過去に関与した事件

上記のようなルールはありながらも、そのように配付できないケースもありました。
それは、上記のような税目別に順点に配付する方式によると、担当させようとしていた者又はその決裁ラインに存在する者が、過去に当該審査請求事件の課税庁サイドにおいて調査を担当していた者(又はその決裁ラインに存在する者)であるケースがあるからです。
このような場合には、そういった者を除外して合議体を構成することや、部長審判官が決裁ラインに存在する場合には、そもそも別の審判部に係属させるといった対応が採られています。
また、審査請求人が、同様の不利益処分について過去に審査請求をしていた場合、過去の担当者を再び合議体に選任してしまうと、調査審理の前から国税不服審判所としての結論が見通されることになり、審査請求人にとっては国税不服審判所に対する信頼感が薄れることにつながりかねないことから、敢えて別の者(その審査請求人にこれまで対応したことのない者)による合議体構成にすることがあります。

4.審判官は学び直し

このように審査請求事件の配付方針を見ていくと、例えば、資産系統の国税プロパー出身の審判官で、たまたま配付された事件が個人事業者の消費税事件であっても、「系統が異なるので不慣れである」という言い訳は許されず、一から学び直した上で、審査請求人及び原処分庁の主張を吟味し、職権調査を行って裁決書案を起案していかなければならないことがわかります。
ただし、国税不服審判所に赴任するという時点で、自らの出身系統以外の税目は皆目わからないというケースはあまり想定されず、周囲のその事案の系統の職員や法規審査担当者のサポートを受ければ、審理能力に特段の影響が生ずるということはないようです。
この点、税理士の民間出身国税審判官は、審査請求書を初見で確認した際に「争いになっている税法の規定を知らない」というケースはまずないという点でアドバンテージがあるのではないかと思われます。
しかし、国税不服審判所は、税法の規定を知っているというだけで国税審判官の職務が履行できるほど甘い職場ではなく、準司法機関として、法令解釈、事実認定(証拠評価)など、リーガルマインドを備えるべきところに大きな壁が立ちはだかることは、経験者であればご理解いただけるのかもしれません。

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