【0027】「民事判決起案の手引き」を繙く

1.大阪審判所の民間出身審判官の構成

私が国税審判官であった3年間のうちの2年目である平成27事務年度は、大阪国税不服審判所(京都支所・神戸支所を含む)の民間出身審判官定員8名のうち、6名が弁護士で、2名が公認会計士(税理士は零)という構成でした。

しかも、公認会計士2名のうち1名が産休・育休を取得されていたため、その事務年度の大方の期間が休職中であり、民間出身審判官の中で弁護士でないのは私1人という状況が続きました。

ちなみに、私は税理士試験・公認会計士二次試験の双方に合格し、双方の実務経験を経て資格登録していますが、国税不服審判所の内部では「公認会計士業界出身」という扱いになっていました。

年に数回、大阪国税不服審判所長・法規審査担当審判官・民間出身審判官をメンバーとした意見交換会が開催されていたのですが、大阪審判所長も法規審査担当審判官も裁判官であったことから、その意見交換会の参加者9名のうち司法試験に合格していない者は私1人であり、疎外感を感じつつ「よくこんな場に座っているもんだ。自分で自分を褒めてやりたいわ!」と半ば妬けに思っていたものです。

なぜ疎外感を覚えるかというと、リーガルマインドを心得ているからこそわかる面白い話(冗談)をみんなが言って、私以外の参加者はその面白さ・機微を理解しているので大笑いしているのですが、私はその話のどこが面白いのか理解できず、作り笑いで繕うしかなかったからです。

2.民事判決起案の手引き

そんな中、裁判官である法規審査担当審判官が、「国税プロパー職員の裁決書案の起案能力の向上のために、我々がリードしていかなければならないのではないか。」と発案し、司法研修所が編集した「民事判決起案の手引き」という書籍の講読会が開催されました。

私ができたことと言えば、その審判官のレジメである「『民事判決起案の手引き』を繙く」の「繙く」を「ひもとく」と読めたことだけでした・・・。

「民事判決起案の手引き」は裁判官に任官されずとも、司法修習生であれば知らない者はいない書籍であり、私以外の審判官は自己の書籍を保有していて、私はたまたま2冊保有していた他の審判官から1冊借り受けて講読していましたが、たった100頁強の薄い書籍であっても、私のこれまでのキャリアでスイスイ読み下せるようなものではなく、今そのコピーや個人メモを読み返しても、当時の苦労を思い出して複雑な気持ちになります。

3.「推認」の起案

たとえば、10訂版の81頁~82頁に「間接事実から主要事実の存在を推認する場合の説示」について述べられています。

「推認」とは、間接事実を総合し経験則を適用して主要事実を認定することであり、相続税事案における名義預金の認定がその典型ですが、そのレジメには、間接事実を積み重ねた上で、

「・・・その収入から本件各財産の原資を形成することは優に可能であったと考えられる。これらの事情を総合すると、本件各財産は、いずれも本件被相続人に帰属する相続財産であると認めるのが相当である。」

という「結論までの持っていき方」が、直近の裁決事例を例に記載されていました。

租税事件では直接証拠がないことが多く、間接事実からの推認が成り立つか否かが重要になる事案が多いのですが、裁決書を受け取る両当事者(審査請求人・原処分庁)とその先にいる将来の利害関係者(税理士業界・税法学者・調査担当者)に対していかに説得的に伝えられるかまで見据えると、こういった「判断プロセス」が結論以上に重要であるケースも多くあります。

税理士(公認会計士)は「数字の積み上げ」は得意ですが、「論理的な文章の積み上げ」に慣れておらず、かくいう私も「民事判決の起案」の要領を得ないまま卒業してしまった気がしてなりません。

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